第1話 優愛

 26歳になった。優愛が亡くなってからもう9年が経っていた。


 俺はいつも通り仕事に出かけた。

 霊がいると噂になっているところだった。


 世の中にいる霊で、特定の人に会いにきたとかいう霊を除いて、ほとんどが怪物だと言われている。だから仕事はほとんど心霊スポットに行くことになる。

 だからお化け屋敷とか、ホラー映画とか、そういうのに怖いと感じなくなってしまった。これが職業病か……



 魔術師は怪物の発している魔力を読み取っている。それによって場所が分かったり、強さが分かったりする。


 俺は怪物の反応があるところまで来た。


 そこには見覚えのある姿があった。


 優愛だった。



「み、湊くん……久しぶり……だね」


 ずっと見てるっていうのはこういう意味だったのか……


「優愛……だよな……?」

「うん」


 ここで怪物を倒さなきゃいけない。それが仕事。でも、優愛と分かった今、倒す(殺す)ことはできない。

 でも倒さなきゃいけない。俺の手は知らないうちに震えていた。


 どうするべきか……


「湊……殺さないで……私、何もしない。だから……湊のそばに居させて!」


「え……」


 それは完全なる違反行為になる。違反行為のなかでも課せられる処罰が特に重いものの一つだ。

 そんな違反のことは優愛もわかってるだろう。わかった上で言ってるのだろう。なら……


「わかった。ただし、なんかしたら、見つかったら、倒すから」

「……ありがとう、湊!」


 優愛は俺に抱き着いてきた。霊も実体があるんだなぁ……と少し思った。


 そのまま優愛と俺は家に帰った。何か起きる訳でもないが。

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