第9話:ザドスの最期(ざまあ回)
「てめえええええ!!」
風が止むと同時に、激昂したザドスが大剣を構えてグレアへと突撃する。
「――食らえ!」
しかしグレアも既に魔導銃で狙いを付けており、トリガーを引いた。俺はその隙にレフィや他のメンバーを戦闘に巻き込まないように突き出た骨の柱の陰へと移動させる。
「食らうかよ!」
流石は、Aランク冒険者。一回見ただけで、魔導弾が危険と判断したのか、正面からではなく、大きく迂回して骨の柱を盾にしながら接近。
グレアが撃った火属性魔術【ブレイズブラスト】の紅蓮の炎を噴き上がるも、当たらない。
「うーん……やはり動きの速い相手に対しては中々当てるのが難しいな……そこが魔術との違いか」
どの魔術もある程度は相手に向かって誘導されるのだが、魔封弾は性質上それが難しい。よって、魔術より当てるのが難しいだろうという懸念は、最初からあった。
なんて考えながら俺が手の中の魔封弾持て余しながら戦闘を見つめていた。のんびり呟いていると、レフィが叫ぶ。
「このままだとグレアが危ないわ!」
ザドスとグレアの距離が縮んできている。
魔術師は基本的に懐に飛び込まれたら負ける。なぜならそんな時に悠長に詠唱なんてしていられないからだ。
「ん? ああ。心配するな。あんだけ近付いてしまったら……避けられねえ」
「へ?」
俺はザドスのいる位置を確かめて、にやりと笑った。
あの場所には既に――俺が解放待機状態にした魔封弾が転がっているからだ。
「――【
「っ!? ばかな!?」
ザドスの足下で、水属性魔術の【ヴォーテックス】が発動。渦巻く激流は周囲の砂を泥へと変え、ザドスの足を絡め取る。
「何より……
グレアが、足に纏わり付く泥から抜けようともがくザドスに向けて、怒りのこもった笑みを浮かべているのが見えた。
「死ね、クソ野郎!」
そんな悪態とこれまでの恨みが、魔封弾と共に発射された。
「くっそ、足が!!」
動けないザドスの目の前で魔封弾が炸裂。
そこから放たれたのは、無数の雷撃。それらはまるで蛇のようにのたうちまわりながら進行方向へ扇状に広がっていく。
足を取られ、更にグレアに近付きすぎたザドスに、それを避ける術はない。
「あれは……【サンダーサーペント】!? 雷属性の禁忌魔術じゃない!」
レフィの言葉と同時に、ザドスの絶叫が聞こえる。
「あがああああああ!!」
何百という雷蛇に噛まれたザドスが、身体から煙を上げながら、泥状の地面へと倒れた。
まだピクピクと痙攣しているところから、まだ死んでないようだ。グレアが倒れているザドスに近付くと、股間に思いっきり蹴りを入れていた。
うわあ……痛そう。
「しかし、しぶとい奴だな。流石は竜殺しというところか。禁忌魔術まともに食らって生きてるとか化け物かよ」
「殺しては……だめだ……」
レフィの言葉に、俺は頷いた。
「分かってるよ。ギルドに突き出すつもりだ。既に救援士には大体の事情は伝えている」
なんて言っていると、やってきたグレアがレフィへと抱き付いた。
「レフィ姉様!! 大丈夫ですか!?」
「あはは……痛いってば。でもありがとう、シールス、グレア。おかげで助かったよ」
レフィが無理矢理笑顔を作ると、グレアが泣きはじめた。
「やれやれ……とんでもないお披露目になったな」
俺がそう呟くと、救援士らしき者達の姿がこっちへとやってきているのが見えた。
こうしてザドスとその部下は、冒険者法違反でギルドに捕まったのだった。
「うっし、ようやく大手を振って、宣伝が出来るな!」
「うーん、店長。でもまだまだ改良する余地はありそうですよ」
「……だよなあ」
新商品として売るには、まだ早いということに気付いただけ良しとしよう。
☆☆☆
冒険者の街ガドラン――地下牢獄
「くそ! 俺を誰だと思っている!! さっさとここから出せ!!」
地下牢に、ザドスの声が響く。
「ああ、リーダー。お久しぶりです」
そんなザドスの前に、現れたのは金髪の優男――バランタインだった。
「バランタイン! 遅いぞ! お前のことだ、俺を釈放させる手筈は整えたのだろ!? 早く出せ!」
ザドスが鉄格子を掴む。しかし、バランタインはその様子を見て冷笑する。
「……残念ながら、貴方はもう用済みです」
「あん? 何を言ってやがる!?」
「今回の重大な冒険者法違反は……貴方と一部の部下達による暴走であると報告済みです。ああ、心配しないでください……【紅蓮の竜牙】はちゃんと僕が引き継ぎますから」
「ふざけるな!! てめえまさか最初からこれを!?」
「その通りです。私は、魔術を見守る者……グレアの存在は今後の魔術史に大きく影響を及ぼすのです。あの店主もですがね。というわけで、貴方の出番は終わりです」
バランタインがそう言ってゆっくりと懐から取り出したのは、洗練されたデザインの――
「や、やめろ!」
「僕のような悪党がぺらぺらと正体を明かした時は大概――相手を殺す気でいると覚えておくことですね」
バランタインが引き金を引いた。放たれたのは、シールスが作った魔封弾より更に小さい。
それが牢屋の中で炸裂する。
「さようならザドス。君には失望したよ……歴史を変えるチャンスを与えられたことにすら気付かないとはね」
バランタインが去っていく背後で、ザドスが喉を掻きむしりながら床をのたうちまわり、やがて動かなくなった。
のちに、ザドスは牢屋の中で謎の窒息死をしたと処理をされた。
しかし、看守達から何度事情聴取しても――誰も地下牢には入っていないと証言していたという。
☆☆☆
【作者からのおしらせ】
ごめんなさああああああいいいいい、一話飛ばしていましたあああああ
いきなりわけわかんないよねええええ
8話投稿したのでお手数ですが、そちらを読んでください……ほんとすみませんでした……
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