13.トレジャーハンターたち
(な、なんか凄いのが来た―――‼︎)
思わず心の中で叫んでしまう深色。侵入者である時点で、明らかにこちらの味方でないことは間違いない。アーマーを着た三人は、鈍い機械音を水中に響かせて、深色たちの居る方へ向かって歩みを進めてくる。
「一体何なのよ⁉︎ あの蜘蛛みたいな化け物は!」
深色がそう尋ねると、アメル国王は苦い顔をして眉間にしわを寄せ、向かってくる相手に向かって怒りの声を投げた。
「おのれぇ……槍を隠していた秘密の扉が開いた事を良いことに群がって来おったか、薄汚い盗賊共め!」
「盗賊って……まさかトレジャーハンター⁉︎ あいつら海賊なの? 嘘でしょ⁉」
深色は驚愕を隠せなかった。何しろ、彼女にとっての「海賊」は、大昔の帆船に乗って大砲を撃ち合い、相手の船に乗り込んで剣を振るうような、頭にバンダナを巻いた屈強な男たちのことを言うものだと思い込んでいたからだ。実際に今、彼女の目の前に立っている海賊は、深色が考える海賊のイメージから大きく逸脱していた。
現れた海賊たちは、深色にクロム、そしてホログラム姿の国王に向かって持っていた長身のライフルを構える。そして、三人のうち左側にいた一人が声を上げた。
「――我々は、反王国組織『アイギスの盾』に属する者だ。盗賊でも海賊とでも何でも好きに呼ぶがいい。だが、我々には果たすべき崇高な目的がある。――おっと、そこを動かないでもらおう。少しでも変な真似をすれば、この
「……なんか、完全にヤバい雰囲気になってきてない?」
深色はここになってようやく、自分が今危険な状況下にあることを認識する。剣を片手に雄叫びを上げながら相手の船に斬り込んでいくような、海賊映画によくありがちな場面も確かに怖いけれど、それよりも、あんな鋼鉄の鎧で覆われた得体の知れない奴らが、雄叫びも上げずにのっしのっしと静かにこちらに近づいてくる様も、中々に恐ろしかった。
中でも中央に立つ人物に至っては、もはや自分の脚を地に付けておらず、完全に背中から生える機械の四つ脚に身を預けてしまっている。あれだけ巨大なヘルメットを身に付けているのだから、もはや機械の脚に頼らなければ、自分の脚だけ体重を支えられないのかもしれない。
すると、右に居た海賊のもう一人が冷静な声色で、深色たち三人に向かい突き付けるように言った。
「事を荒立てぬよう、ここは穏便に話を進めたい。こちら側の要求は一つだけだ。――アテルリア王国の秘宝である黄金三叉槍を、我々に引き渡してもらおう」
この海賊たちは、秘密の部屋の奥にある黄金の槍を狙っていた。王国の守護神であるアクアランサーの武器であり、アテルリア随一の国宝ともなれば、当然力を以て奪おうとする者も現れてくるだろう。現に、あの槍から放たれる神秘的な輝きは、見る者全員を虜にさせる程の美しさがあった。クロムが
「くそっ!
アメル国王はぐっと拳を握ると、カニのカラクリを素早く反転させて、深色の方へ向き直る。
「勇者ミイロよ、残念ながら今は時間が無い。決断の時だ! わが王国をあのような野蛮人共から救ってくれ! 頼む! この通りだっ‼︎」
そう言って、ホログラム姿の国王がいきなりその場で土下座をし始めるものだから、深色は仰天してしまう。
「ちょ、ちょっと待ってよ。それって今すぐに決めなきゃなの⁉︎ そんなこと言われたって、私海底人でもないし、ただの普通の女子高生だし、それにそれに、大して美人でもないし胸も小さいし、ええと後は……」
慌てふためいた深色は、とにかく思いつく限りの言い訳を並べ立てて、返答を頑なに拒もうとした。
しかし、結局アメル国王は、頼みの綱である深色からの返事を聞くことができないまま、前線を退いてしまうこととなる。
背後に居た海賊三人組のうち、蜘蛛のような見た目のアーマーを着た中央の人物がこちらに近付き、土下座する王様に向けてヘルメットのバイザーを向けていた。
途端に、バイザー部分が赤々とした光を帯び始め、ヘルメット全体がカタカタと小刻みに震え出す。
やがてその震えが限界に達したその時、一本線のバイザーから真っ赤なレーザーが噴水の如く噴き出し、土下座する国王を映していたカニのカラクリを撃ち抜いたのである。カラクリは木っ端微塵に砕け散り、深色とクロムはその爆風にやられて後方に吹き飛ばされてしまう。
「ちょっ……! いきなり攻撃するとか卑怯でしょ!」
そのまま二人は槍の納められていた部屋に押し戻されてしまい、海賊たちに部屋の入口前を占拠されて、完全に退路を断たれてしまった。
「やっと見つけた! ありましたぜアッコロさん! まさかこんなところに隠してあったとはな!」
海賊の一人が、部屋の中央に刺さったまま神々しい黄金の光を放っている槍を見て、歓喜の叫びを上げる。これまでずっと隠されていた国の宝が、とうとう海賊に見つかってしまったのだ。
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