『恐怖の大王シリーズ』 その5

やましん(テンパー)

『脱走者』


 恐怖の大王が、相変わらず、こわ〰️〰️〰️〰️い夢にうなされて、ようやく、虚空を掴むように起き上がった刹那、報告が上がった。


 これは、つまり、大王は、常にスタッフから監視されていると、言うことである。


 『大王さま、おはようございます。』


 『やあ、大臣、ぐっ、モーニング。』


 『ども。あの、朝からナンなのですが、新任早々しくじった、在任期間半日だった前次官ですが………』


 『ああ、着任早々、新しい制度を作りたいとか、余計なこと、言ったやつな。けっ! 新しいのを作るのは、おいらだけだ。』


 『御意。それで、あなたさまのお目こぼしにより、死罪は免れましたが、今朝早く、まんまと、脱走いたしました。ワープ機能付の最新型クルーズ挺を盗んだのです。行く先は、地球に、違いないです。』


 『ふん。いい。』


 『は?』


 『いい。ほっとけ。いなくなって良かったね。あいつは、気が小さいから、まあ、仕方がない。なかなか、理解はされまいて。恐ろしいことだ。』


 『はあ、では、御意のままに。』


 『うん。もう、おいら、あまり、恨まれたくないんだなあ。わかる? 君?』


 『はあ。大王さまの奥深くなど、私ごときが、知るよしもなく。』


 『うん。そこが、あんたの良いところだ。朝御飯は、お握りがいいな。おかかと、こんぶと、フレッシュたまごやきね。あと、こーしー

。』


 『御意のままに。』



     🍙 🍙☕😃☀️ 🍙



 大臣補佐見習いが尋ねたのである。


 『大臣。なせ、大王さまは、あいつを消さなかったんですか?』


 『そりゃ、きみ。あの方は、大王さまの隠し子だからだよ。大王さまは、御心がお広いのだ。まだ、復権する機会はあるだろう。まあ、分からないがね。今後の動き方次第だなあ。』


 『なるほど。たしか、逃げた。いや、つまり、その、旅におでになった御方は、《野末寅騙素さん》でしたか。』


 『そうだったなあ。長く他国に流されていて、やっと、チャンス到来だったんだ。なにも、余計なこと、しなければ、良かったものを。いいかね。君は若い。事は、起こるのを待つ、のだ。先取りは、良くない。例外は、命懸けになった最後の場合だけだ。あとは、大王さまがお決めになるか、お決めにならないかだけだ。』


 『はい。刻みました。』


 野末寅騙素(のすえとらだます)氏は、大王のミサイルを追い越して、かなり早く、地球に潜入し、地球人に各種の警報を出したが、大王の見立てどおり、あまりに、回りくどくて、よく理解されず、オカルトの分野でのみ、長く記憶された。


 その後、大王の王国に、別の名前で、復権したとも、言われるが、それが、誰なのかとか、詳しくは分からない。

 

 実は、すべて、大王さまの策略だったのではないかとも言われたりもする。


 あの、ミサイルは、いまも、地球をめがけて飛んでいるのだ。


 しかし、それが、またさらに、恐怖の大王の、おぞましき恐怖感にガソリンを注いでいた。


 恐怖の大王は、勝手に、決断を迫られていたのである。



     ・・・・・・・・・





 




 


 


 

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『恐怖の大王シリーズ』 その5 やましん(テンパー) @yamashin-2

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