第4章 APNによる
第54話 雨
金木成との一件があってから1ヶ月。季節は梅雨に入った。1日中雨が降り続き、少しの水分でも物は直ぐにカビが生えて来る。
そんな季節、ジャックによって作られた地下室にて。
むわっと広がる熱気。しかし、ジャックによって作られた地下室は換気・除湿までお手のものでーー。
「……クソッ。ダメだ」
「まだ甘いですね」
まだ、コツが掴めない。
眉間に深く皺を刻む颯太は、床に倒れ込んだ。
地下室に籠り、京と共に颯太は訓練を行っていた。それでもーー。
「ッ……ぷはぁッ!! やっぱりまだ動かないか」
「そう簡単に出来るなら皆さんやられますよ。地道な努力あるのみです」
「分かってる」
能力の強化。具体的に言えば、能力を口に出さずして発動させる事は出来ずに居た。
体力は大体元に戻った。だが結局の所、体力が前よりもあれば戦闘に勝てる訳ではない。
そうして、成宮に教えて貰ってはいるがーー。
「もっとグワッとさせるんですよ」
「………」
意味が分からない。
肝心の指導者がこれでは……だけど自分の回りで使えるのは優理さんか、キムか成宮のみ。翔さんも恐らく使えるだろうが、今の所は見た事はない。吹に至っては、同じ平凡者。
そして、俺が先行者だと知ってるのはキムと成宮だけだ。
颯太は1度大きく息を吐くと、近くにあるセンスのある(?)魔王が座る様な玉座(椅子)へと座った。
「キムは?」
「キム様はお忙しいようで、世界を飛び回っておいでです。今はイギリスに居ます」
ここの所キムは絶えず、動き回っている。所謂事前準備に取り掛かっている。その為か、日本には殆ど居ない。つまり、教えてくれる者が居ない。
5つのスキルを持つクインティプルホルダー。そうだとしても、今持っているのは物体支配と空間支配のみ。
これだけでも強い。強いが、使いこなさなければ意味はない。
颯太が何度目か分からない溜息を吐くと、京は颯太の顔を覗き込む様にして身体を傾けた。
「1度気分転換にAPNにでも行ったらどうですか?」
「いや……APNに行っても何もする事は無い。寧ろ訓練も出来ないだろ。行く意味がない」
キム達には、自分が
それなのに何故行けと言うのか。
「人間、内に籠っているだけでは何かを成し遂げる事は出来ませんよ。キム様も考えるより行動する事を信条に金木成を経営されています」
「………つまり?」
「此処でウジウジ同じ事をしていても結果は得られない。何か他の方法を探ってみるのも手だという事です」
「お前…………生意気になったよな?」
「生意気ではありません。颯太さんのお望み通り、厳しく指導しているんです」
確かに「強くなりたいから厳しく指導して欲しい」とは言ったが、こういう事ではない気がする。
颯太は大きく伸びをしながら立ち上がった。
「ふぅー……気分転換にもなるか」
金木成の一件があって以来、優理さんから1度電話を貰ったものの、無事だという事を少し話して終わり。
今までは療養すると言っていたが、そろそろ顔を出しても良いかもしれない。
「それじゃあ俺はAPNに顔を出して来る。いつ帰るかは分からないから、用があったらまた連絡する」
「はい。いってらっしゃいませ」
成宮の丁寧なお辞儀を背に、地下室の階段を上がる。地上付近まで上がると、入口横にあるボタンを押して扉を開いた。
「雨、か……」
外は小雨が降っていた。霧雨の様な、小さな水の塊が辺りを濡らしている。
雨の音、雨の匂い、そして暗い空。
雨は嫌いだった。
学校に通っていた時、朝から雨だと学校に行くのがとても憂鬱だった。殴られに行くのに、天気の事も自分を否定しているようでーー。
だが、今では雨は嫌いじゃない。
時々、この雨を身に受けて歩きたくなる。
あの時の感情が嫌でも思い出されるから。
颯太は傘を差さず、地下室から出る。
纏わり付く濡れた衣服が、憎いと思う程に気持ち悪い。
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