第46話 デスゲーム

 颯太達は車から商品が入っているであろうアタッシュケースを出し、目的地である都心の高級ホテルへと着いていた。周りには同じ様に商品の護送を頼まれている様な柄の悪い連中、それも戦った様子が見て取れた連中が居た。


「ふぅ。取り敢えず怪我もなく着いたな」


 そんな中、無傷な翔はホテルのフロントのソファに座り込み、肩を回しながら言った。


 それも周りに聞こえる様、堂々に、だ。


「おい……」

「あぁ……アイツ……」


(この人……意識して言ってるのか無意識で言っているのか分からないな)


 怪我をしている連中を煽っているかの様なその言動、少し空気がピリついているのが分かる。


(APNという組織はまだ出来たばかりの闇組織……敢えて目立つ様にしている)


 颯太は思い至る。


 増してや、いつも些細な事に気付く様な優理さんが何も口出ししないという事はそうなんだ……此処で戦闘になるか?



 ピンポンパンポーン



 APNと他の闇組織の連中とで不穏な空気が流れる中、唐突にホテル内のアナウンス音が響いた。



『あー、テステステス……皆さんこんばんは。私は今日の開催者のサイコと申します。お見知り置きを』



 何処かノイズが入った声。まぁ、オークション開催者というなら素性は知られない方が良いか。しかし、何で今頃になってアナウンスなんて……。


 颯太達が此処に来て1時間は経っていた。それにも関わらず、ホテルのフロントで待たせ、なんの誘導も連絡もなし。高級ホテルなのに雑な対応だ。


「そんな事どうでもいいんだよ!! 早く要件を言いやがれ!!」

『ふむふむ……どうやら気合は十分なご様子。これは盛り上がりそうですね!!』

「あ? 何言ってやがんだ!!」

『さてはて、それでは始める前にもう一度ルールを説明しましょう!!』


 ん……? 何だ?


「会話、嚙み合ってない」

「そうだな? なんだ?」

「どうしたのかしらね?」


 吹も疑問に思ったのか、口に出す。そう。何かこれはおかしい。まるで、俺達には話していないような。


「おい、何だこれ」

「さぁ、誤放送とか?」


 周りに居る者もこのおかしさに気付いてる。



 一体これは……。



『さて……ご確認ですが皆様。護送していた商品を仲間の内誰かが持ってはいるでしょうか?』



 そう言われ、各々護送していたであろうアタッシュケースを掲げる。



『ひぃ、ふぅ、みぃ……はい、確認完了です』



 と言われた瞬間。すぐ近くにあり、目に入った翔が掲げていたアタッシュケースが四散したのが見えた。そして、四散した物が凝縮してバンドの様になると手首に巻き付く。


「ちっ!!」

「何だってんだ……」

「うざってぇ」


 抵抗空しく、誰一人としてそれから逃げる事は出来ない。


『無事に生き残ったのはこのメンバーだけみたいですね! それでは皆さん! 手元にあるリストご確認下さい!!』


 やっぱり、何か変だ。俺達の手元にはリストなんて存在しない。


『そこに書かれているのは、今参加している闇組織の名前! そして倍率が書かれています!』


 ……おいおい! まさか!!


『お客様のかけ金に比例し高くなる! 大本命を狙いに行くか! それとも大穴を狙いに行くか! 先程までの映像を見て判断して頂いても結構です!!』


 その言葉に、自然と思い至る。


「おい! さっきから何言ってんだ!!」

『そちらのマンション、建物の材料には職人がより力を入れて作って貰いましたのでロケットランチャーでもない限り、そこから出る事は出来ません』


 都合よく、こちらからの言葉は聞いてもくれない。



 舐めていた。そう言わざるを得ないだろう。

 これが闇組織、裏での仕事。



『さぁ、デスゲームの始まりですよ』





 依頼でさえも、信頼出来ない。

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