第45話 2人の戦闘

 2人の戦闘は圧倒的と言わざるを得なかった。


「ぶっ! ばぁっ!」

「まだまだ。頑張れ」


 吹は両拳を握り、相手の出してくる拳に合わせてカウンターを喰らわせていた。相手の動きが分かるかのように、俺には絶対に出来ないパワーとスピードと相手の力を組み合わせたそれは、圧倒的な破壊力を生み出していた。


「っつあぁ!! はぁっ、はぁっ、はぁっ!」

「あら? こんなものですか? まだまだ行きますよ?」


 優理さんは息もつかない連続攻撃で相手に攻撃の隙を与えない。優理さんの進化先は海深人。固有スキルは『呼吸静止』。つまりは呼吸を止めて攻撃を行い続ける事が出来る。


(だからと言ってあのスピードは異常だけどな…)


 見た所、そのスピードは身体能力お化けである吹よりも速く見える。


(何か他にもスキルを使ってるのか…?)


 ーーと思っている所で、丁度吹の戦闘が終わり、優理さんの戦闘も終わる。


「大した事ない」

「そうね。でもこれで襲撃がなくなったっていう訳じゃないから油断しないで行きましょう」


 強さだけじゃない…戦闘においての経験値が俺とは圧倒的に違う。


(…もっと、戦闘を行わなければならないか)


 俺が眉を顰めて見ていると、道の端から翔が出てくる。


「いやー、皆んな無事で何より!」

「今までどこに行ってたんですか?」

「すぐそこの路地裏だ。相手に吹っ飛ばされてな〜」


 翔は腰に手を当て、豪快に笑う。


「相手はどうしたんですか?」


 俺はそこですかさず聞いた。

 今まで、翔さんの戦闘を見た事がない。吹に手を出した時は凄い威力だったが…詳しい戦闘方法は見ていないのだ。


 すると翔は少し目を見開いた後、頭を掻いて笑って答えた。


「実は何だかんだ仲良くなってな〜」

「は?」

「後ろ向いた所で思いっきしぶん殴った」


 意味が分からない。相手が油断した所を攻撃した…という認識でいいのだろうか。


「気にしないで。翔っていつもそうなのよ」

「え、どういうことですか?」

「なんだかんだ翔の見た目とは裏腹の性格に皆んな毒気を抜かれちゃう……という認識で良いと思うわ」

「……優理さんも分からないって事ですか」


 優理さんはそれに肯定するかの様に大きく首を縦に振った。


 ……分からない。例えそうだったとしても、戦闘中にそこまで油断するだろうか。


「ま、早く商品持って会場に急ぐぞー」


 翔はほんわかと颯太達を纏め上げると、4人は車の方へ商品を取りに行くのだった。



 ***


「それで? どうでした? 尻尾は掴めましたか?」

「いえ…残念ながら尻尾を掴むと言うほどの情報はありませ

「だから言ってるでしょう? 報連相は確実に。些細な情報も、偽物であっても役に立つと。良いから言ってみなさい」

「……作戦通り、商品を下の者に運ばせると、多くの者が襲撃されました。幾つか商品も守る事も出来ず、何人か死傷者も出ています」

「それで? ピックアップされるのはどなた達ですか?」

「3つのグループで、絞殺によって相手を仕留める戦闘法を取った者がいるようです」

「なるほど……それで? その中にアイスピックの様な武器を使う者は?」

「おりません」

「……では今回の戦いでアイスピックの様な武器を使った者は居ますか?」

「少々お待ち下さい………居ました。前調べた時にも候補に上がってはいましたが、なにせ"平凡者"ですので候補から外しました。ですがこれは……」

「ふふっ、なるほど。態々商品を下の者に運ばせた甲斐があったかもしれませんね」


 男は、不敵な笑みを浮かべてビルから下の景色を見下ろした。

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