第32話 系統
ちょっと待て…この陽気なオッサンは何を言ってんだ…。
平凡者同士仲良くしようってのは分かる。
それでなんで此処が俺の部屋って事になるんだ。
「…俺が此処に住むって事か?」
俺は敬語を使うのをやめ、タメ口で聞く事にした。もう、敬語を使うのも馬鹿馬鹿しくなったしな…。
「そ、そうですけど…ダメだったですかね?」
花見はいきなりのタメ口にビックリしたのか、吃りながらも話す。
「いや、何で花見が俺を此処に住まわせてたいんだよ…」
「同じ平凡者同士いた方がお互い危険な事があった時に助け合う事が出来るじゃないですか!」
花見は笑顔で俺に話しかける。
……なるほど。取り立てを無くした俺を上手く使いたいって訳か。俺が此処に来なくなって、取り立てみたいなトラブルになったら対処するのは大変だからな。
これなら納得出来る。
「まぁ、それはそうだな。で? 問題は金だが?」
「お金?」
「あぁ、家賃、食費、光熱費、水道代があるだろ。その金はどうするんだよ?」
「そんなの要らないですよ!私達は同じ平凡者じゃないですか!! あっ!勿論私がご飯を作りますからね!!」
…シャバ代と比べたら俺を養う方が安いか。ご飯も作ってくれるって言ってるし、自分の部屋には帰りたくないし、丁度いい。
「そうか。じゃあお邪魔させて貰う」
「はい!! 何もない所ですけどゆっくりして下さい!!」
花見は颯太が食べ終わった食器をお盆の上に乗せて、扉を開けた。
そして、此方を振り返る。
「…あ、あの七瀬さん…」
「何だ?」
「親に連絡とかは…」
「……あぁ、大丈夫だ」
「……そうですか」
そう言うと花見は出て行った。
「…これからどうするか」
颯太は寝転がり、1人呟く。
APNの一員にして、自分の学校の同級生、校長先生を殺害した張本人、そして昨日、下部の闇組織の頭領と対話をした1人。
闇組織の代表と会うなんて1年前の俺だったら一生無いと思ってたが…まさかこんな事になるとは…。
感慨深いとでも言う風に目を瞑ってテレビのリモコンをいじっていると、不意にテレビの電源を入れてしまう。
『…日の天気は晴れまたは曇りでしょう』
……ニュースには放送されてないな。
俺は昨日、俺の骨を粉々にしたヤスと言う人物とAOSの者を3人殺している。
AOSの方はアマンダがどうにかしたとして…ヤスって言う奴の方は殺した人物が特定されていないらしい……どうやら上手く行ったようだ。
颯太はヤスと戦闘を起こす前に、裏にある駐車場の監視カメラの位置を把握すると、"物体支配"で自分の姿を映らなくする為に、てんで違う方向を向かせていた。
また、それは帰りもそうだ。裏の駐車場から出た時を捉えられれば正体が分かってしまう。その為、そちらの監視カメラも命令していたのだ。
その代わりにあのエミリーって子が捕まってしまったみたいだが…まぁ、何だかなるだろ。
それよりも今大事なのは、俺のこの能力…。
"物体支配"と"空間支配"だ。
この能力の名前からして、俺のスキルの系統は恐らく"支配"だ。早く頭の中でイメージ出来る様にして発動の時、言葉を発さずに発動出来る様にしてしないと…。
種族には固有のスキルが存在する。
また、それと同時にスキルの系統という物も存在し、その系統によりスキルがどの方向性で育って行くのか決まっている。
火龍人の場合、固有スキルは"身体強化"。スキルの系統は"強化"。
海深人の場合、固有スキルは"呼吸静止"。スキルの系統は"静止"。
地堅人の場合、固有スキルは"身体硬化"。スキルの系統は"硬化"。
風妖人の場合、固有スキルは"癒光"。スキルの系統は"治癒"。
このように種族には固有のスキル、系統が存在する。
例えば、火龍人が風妖人の様な治癒系統のスキルを使いたくても、後に覚える事は決してない。
その者がダブルホルダーで、もう一つスキルを覚える可能性があったとしても、系統の違うスキルは覚える事が出来ないのだ。
マイ先生の様に優秀な保健医になりたかったとしても、風妖人以外の種族なら目指す事も出来ない世の中。
進化先というのは人生を左右する物なのだ。
そして、進化も出来ない者はその話にもならない。
…今の俺には将来の仕事なんて気にしてる暇ない。
系統はイメージを固める上で大切な要素だ。その系統を軸に頭の中でイメージする事によって緻密な発動を行う事が出来ると言う。
これは教室で小耳に挟んだ情報だけど…情報が確かなら発動練習の大きなプラスになる筈!
颯太は胡座をかいて、目を閉じた。
"支配"の系統。
それは今まで類を見ない系統である。今まで発見された系統は全部で4つ。
強化、静止、硬化、治癒。
世界では進化先を国連へ報告するのが義務づけられている。
しかし、
この世には80億人以上の人間が存在する。
その中では勿論、敢えて報告しない者もいる…。
まだ4つの進化先以外、国には報告されていない…。
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