第2章 復讐

第11話 報告

「それは本当か? 七瀬?」


 先生はそう俺に問いかける。


「…はい。そうですけど」


 俺がそう答えると、皆んなから痛い程に睨まれている事が分かった。


「何で言わなかった…そう言う大事な事は真っ先に言うべきだろ…」


 先生は俺に睨みを効かしてくる。


 ちっ…まず、俺の事を時代の遅刻者と言った事から注意しろってんだ。それでも教職者かよ。

 俺は内心で毒を吐きながら、答える。


「俺は確かに、健斗達の第1発見者です」

「なら何があったのか

「俺は帰りにジュースをたかられただけです。その後、彼等に携帯を貸してた事を忘れていて、健斗達を探していたら神社で彼等が…」

「……そうか」


 ーー悲しくなるな。


 俺がたかられている事には何も反応を示さない、ましてやこれを不思議とも思えないこの世界に俺は感動すら覚えるよ。


「本当にそうですかね?」


 嫌悪感を覚える、低いトーンの声が聞こえてくる。

 振り返るとそこには、キザな顔をした男、総司が居た。


「どういう意味だ?」


 俺は総司へと聞き返す。


「どうって、それは唯の言い分に過ぎないじゃないか。証拠がない」

「確かに……」

「そうだよ! 証拠を見せろよ!」


 総司が言った途端、俺はクラス中から集中砲火を喰らう。


「証拠はないな」


 俺はそれに飄々とした態度で返す。


「なら

「でもそっちにもそう言い切れる証拠がないだろ? 誰か俺が健斗達と神社に行ったって言うなら別だが……」


 そう言うと、クラスは先程の勢いがなくなり静まり返る。


「…ーーーーーー」

 総司は小声で何か言うと俺の近くから離れていく。


 キーン コーン カーン コーン


 朝のホームルームが終わる鐘が鳴る。

 すると、クラスにいる者は渋々と言ったふうに席へと着いた。


「とりあえず、これで朝のホームルームは終わる。……一応七瀬は後で職員室に来てくれ」

「はい」


 これで朝のホームルームは終わった。

 何とか乗り切る事が出来た。そう思った俺だったが、話はこれからだった。







「えー……昨日、うちの生徒3名が何者かに襲われて神社で倒れている所を発見されました」


 放課後、体育館にて集会が開かれる。


 昼に行った時、すぐ返された理由はこれか……。


 生徒達はクラス毎に体育座りをして、校長先生から佐藤達の話を聞くと、体育館は一気に喧騒へと包まれる。


 まぁ……自分の学校の生徒が亡くなったんだ。当たり前の反応と言えばそうか。


「ーーー、えー、此処で第1発見者である七瀬颯太君に話を聞きたいと思います。七瀬君、ステージへ」


 校長先生は慣れた手つきで俺をステージ上へと呼ぶ。


 学校で平凡者だったのは俺だけ……知らないって人はいないか……。


 俺は一瞬立つのを躊躇ったが、直ぐに校長と目が合い、素直に立ち上がった。


 タッ タッ タッ


「え、あれって時代の遅刻者だよな?」

「アイツが第1発見者?」

「何か怪しいよね」


「彼は確か時代の…あ、平凡者の子でしたよね?」

「そうです、前日に佐藤と問題も起こしているので……」

「……それは、怪しいですね」


 自分の足音と、生徒達、先生達の噂話が体育館に響く中、俺はステージへと上がる階段を登った。


「……」

「では七瀬君、分かってるね?」


 俺が教壇の上にあるマイクの前に立つと、校長が後ろから小声で何かを言ってくる。


 ははっ、何が分かってるね? だよ。


「俺はあの3人を見つけた第1発見者ですが……分かっている事はナイフの様な切り傷があったという事、それだけです」


 颯太はステージ上からそう言い切ると、礼をしてステージから下がろうとする。


 しかし、それは校長先生に止められる。


 颯太の肩を掴む手は、肉を抉るつもりなのかと言うほどに力が込められていた。


 それに颯太は顔を歪ませる。


「七瀬君? 言う事は本当にそれだけかい?」


 ……なるほど。俺を犯人だと自白させたいってことか。平凡者はいるだけで学校のイメージダウン。ははっ……。


「はい、これだけですね」


 俺は校長の言い分に対して、笑顔で答えた。


 すると、校長の顔が赤く染まっていく。

 生徒、しかも平凡者に向かってこんな口の利き方をされたら大抵の教師はぶちギレる。


 しかし、歳を喰っている事はあるだろう。校長は生徒達の前の為か、何も言わずに俺を険しい表情で見送った。


 俺はこんな簡単にこの状況を乗り切れた事に少し安堵して階段を降りようとすると、生徒達の方から声が上がった。


「俺、アイツが佐藤達とに行くところ見たぞ!!」

「わ、私も!」

「お、俺もだ!」


 俺のクラスの者らがその様な声を上げる。


「はぁ?」


 それには思わず、俺も呆れ果てる様に声を上げてしまった。上げずにはいられなかった。

 何故なら朝のホームルーム、俺が言った後何も反論すらしなかったクラスメイト達が、今ではこんないけしゃあしゃあと言った様子で同調して言ってくるのだ。どう考えてもハッタリをかましているのは明白だった。


 しかし、それを分かるのはウチのクラスメイトと担任の先生だけ。


 俺は担任の先生へと視線を向けた。

 すると、先生はそれに此方を見下しているかの様な表情で笑い返す。


「おい、こっちに来い」


 校長からも先程とは打って変わって、ドスの効いた様な声を掛けられ、俺はもう1度肩を掴まれる。




「ちっ……」


 俺は舌打ちをしつつ、もう1度教壇の前に立たされた。





「ふふ…」





「ほら、正直に話せ」


 校長からまた後ろから小声で話される。



「………あ、すみません。靴紐が…」


 俺の事を見限るならそれでいい…ただ、


 俺は1度靴紐を結ぶという名目でしゃがむ。そしてしゃがみ込む寸前、校長に少し目を向け、マイクには音が入らない声で言った。


「後悔するなら死んでからしろよ?」

「何か言った


 校長から言われる言葉を遮り、俺は言った。


「物体支配、発動」

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