第21話 夏目アオイの消息



「無断欠勤とかあいつマジで何考えてんのよ」


今日に限ったことではない。


時々アオイは無断で学校をバックれ、適当に遊び歩くことが多々ある。

それに関して宏美は「本人の自由なので咎めたりはしない」が、それでもイラつくものはある。

具体的に彼女の口からは絶対に出てこないものだが、それでも色々と言いたいことが溜まり積もって彼の自宅へとカチコミに行くことにしたが、


「……アンタ誰」


アオイ自宅の扉の前でオロオロしている女性を見かけて、不審者だと携帯を取り出した。



「はぁ! アイツ海外行くの?」


玄関前で無言の攻防を繰り広げていた宏美と優香だったが、それに気づいたカスミによって仲裁をうけ、両者共になし崩し的に家の中へと招かれた。


そして昨日カスミが聞いたアオイの会話を伝えた。


「昨日姉さんと喋ってて、それでよくわかっていないんだけど」


「私に連絡してきたのはそのせいってわけね」


昨日起きたサラによるアオイを海外に連れ出す話。

本人は肯定こそはしていなかったが、否定もまたしていない。


しかもはぐらかすように去っていったアオイにカスミは妹だから感じる何かを読み取った。


「はい……お兄ちゃんが何考えてるのか聞いてほしくてできる限りの人に声かけたんですけど」


「今のところ来れたのが私くらい」


「あれのことだから私たちですら何考えてんのか分からなく時もあるし……」


首を捻って考え込む仕草をとった優香にこの状況での違和感を感じた宏美はおもむろに手を上げて、


「アオイってここにいないの?」


「いまは学校に……」


「アイツ学校に来てないわよ」



栄えた都市部から離れ、住宅街から抜け出した場所にある平坦な場所にアオイの姿はあった。


そして遠くに見える電車の影を横目で見てから足を動かし、片手に掴んでいる花束を持ち上げて、


「久しぶり、母さん。母さんが死んで…………3年が経ったよ」

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