第3話 創真学院の万引き犯の意外な正体

 担任は蒼白な顔で、檀上で話を続けた。

「創真学院中学の名誉にかけて、まさかそんなことをする生徒はいないと信じたい。なぜなら、本当に自分のものにするつもりなら、わざわざエスカレーターの横に置いたりしないから、いたずら半分でやったに違いないが、心当たりのある者は、正直に名乗り出るように。

 ちなみに盗まれた商品は、弁当袋と商品券らしい」

 きららは、ハッとした。

 昨日、自分の拾った商品は、すべて盗品だったのか? そして犯人は、創真学院の生徒である可能性が強い。

 きららは、落とし物の拾得者といった形で名乗り出るべきだろうか?

 しかしうっかり名乗り出たりすると、自分こそが万引犯ではないだろうかと、疑われてしまう。しかし、真実はいつか暴露するときが訪れる。

 きららは、昨日拾った品物を、担任に渡す決心をした。


 きららは、正直に担任に、昨日拾った弁当袋のなかに三十枚の商品券が入っていたことを名乗り出て、担任に渡した。

 担任は意外にも、きららにいささかの疑いの目も向けず、きららの発言をすっかり信用してくれ、後にデパートに返却すると言ってくれた。

 きららはホッとした気分で、職員室を出て家路を急いだ。

 するとそのとき、クラスメートの男子の一人に呼び止められた。

 彼は、克己君といい、クラス一の秀才だった。

「水田さん。実はね、あの品物を万引きすることができず、エスカレーターの横に置いたのは、この僕なんだ。

 僕はいつも期待されていて、一番をとることを期待されていた。

 それだけが、僕のアイデンティティと思われることがしゃくで、ああいったバカな行動を取ってしまったんだ。もし、明るみにでなかったら、僕は万引きまがいを繰り返していたところだよ」

 意外としか他に言いようがなかった。

 

 しかし、克己はなぜ、きららが万引きまがいの商品を持っているのを知っているのだろうか?

「水田さん、僕は昨日、君がエスカレーターで僕の万引きした品物を拾っている現場を見ていたんだ。

 君なら正直に、真実を打ち明けることができると思ったんだ。

 あっ、このことは絶対、誰にも内緒にしておいてくれ」

 そういって克己君はきららに手を合わせて、懇願し立ち去っていった。

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