できたてほやほや・昼休み・正真正銘

「とにかく世界が昼休みしている間に帰ってこれてよかったよ」


 つとむさんはしみじみと不思議なことを言う。それがいつものことなのだけれど。昼休みとは一体どういうことだ。少なくともたすくがここから離れてから年単位で時は流れていたはずだ。それが昼休みの時間だけだったとでも言うのか。


「不思議そうな顔をしているね。まあ、この世界の秘密をまだまだ知らない君たちにとっては到底理解できないかもね。でも、今このタイミングは世界からしてみれば随分と平和な時間なんだ」


 ふう。と一息ついて勉さんはなにかを考えるように上を見上げる。その表情はなんとも言えず、どこかふわふわしている。


「ほんとは黙ってようかとも思ったんだけど。ここまで巻き込まれてしまったし、ここから先、混乱する世界で君たちの戦力はたしかに必要だ」


 物々しいその様子に全員が息をするのも忘れたかのように静まり返る。


「実は、この世界はできたてほやほやなんだ」


 その言葉に理解が追いつかない一方で、感じていた違和感がどことなくつながっていくのを感じる。


「現実世界と呼んでいたこの世界。確かに僕らにとっては正真正銘、現実世界だ。でも。これまで経験してきたとこを思い出してほしい。本当にこれは現実世界だと言えたのかな。佑が物語のように、我々も物語でないという保証がどこにあるのか」

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