ときめき・スイッチ・きびだんご

 犬。猿。きじ。それらのきぐるみが大砲を担いでいる。きびだんごのお礼にしちゃ言うことを聞きすぎだしいささか過激すぎる気がするけれど、彼らもまた利用されているだけなのだ。しかも強制的に。


 この世界に留まらせておくことはできるけれど。それが彼らのためになるとも思えない。四天王たちみたいにここからの解放を望むかもしれない。それは語り部にとっても物語たちにとっても。この世界にとっても不幸だ。


 そこでスイッチが入ったかのように記憶の濁流が頭の中を渦巻いていくのがわかる。弾丸と呼ばれた自分の記憶がたすくのものと混ざり合っているのだ。


 ああ。気持ちはわかる。この世界は魅力的なもので溢れかえりすぎている。それは設定というしがらみに囚われた物語の世界とは別次元の感覚だ。そこにときめきを覚えてしまうのは無理もない。


 これを知ってしまったら帰りたくないのもわかる。ここにずっといたくなるのもわかる。でもこの世界を壊すようなことをしてはいけない。そう考えたらここにいる連中のほうが統率もとれているしいからかマシなんだろう。でもこいつらは氷姫ひめたちに危害を加えようとしている。たとえそれが世界の秩序を守るためだったとしてもやりすぎだ。


 自分でも矛盾しているなと思う。結局は身近な人達を守りたいだけのいいわけだ。でも、それが物語だ。自らの正義を振りかざし。守りたいひとを守る。それが世界を守ることにつながると信じて。

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