毎日・女子・金メダル

 毎日毎日、剣を振り続けた記憶がある。でもこれはたすくの記憶じゃない。この物語の力に込められた記憶だ。この力を得るために費やされた時間と努力の結晶だ。それはきっとオリンピックで金メダルを取るよりも難しい。


 それを振るうことができることは特別なことなんだと脳裏に刻みながら力を振るった。


 黄昏色に散っていくきぐるいたち。そしてそれを見て驚くライオン。


「き、貴様っ。恩を仇で返しおって」


 恩を受けた記憶はない。これからもきっと彼られに助けられることはないはずだ。たとえここが物語にとっての仮想的な楽園だとしてもだ。


「貴様がここにいられるのは我々のおかげだろうが」


 知らない。そんなことは知らないのだ。九重佑という人間は最初からいない。誰かを犠牲にしてこの世界に顕現したとしてもだ。いるはずのない人間。だから、誰のおかげとかそんなはずない。


 あるとしたらそれは復讐だ。この世界に顕現する理由を作ったのならそれは許すことができない。


 力ない女子のように脱力しきって、抵抗しようにも対した力を持っていなさそうなライオンに向かって剣を振り下ろした。

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