歯車・嗚呼・は捨てる場所がない
「ドラゴンなんて、そんな大したものじゃないのに。体が大きくてただ長生きで、ちょっと物語でちやほやされるだけなのに。どうしてこうも傲慢になれちゃうんだろう」
「隆司くんなんだよね?」
ちょっぴり大きくなって、大人びた気もするがそれでも氷姫より二周りくらい小さいままだ。それがあんな大きなドラゴンだったなんて信じられない。
「そうだよ。久しぶりだね氷姫お姉ちゃん。元気だった?」
それはこっちのセリフだ。行方不明になって以来どうしていたというのだろうか。
「おいっ。お前らそんなことを呑気に話している暇はないぞ。さっさとコイツらを下の奴らに突き出さないと行けないんだからな。隆司もドラゴンになれるならこいつら運ぶの手伝っちゃくれないか?」
「無理だよ。疲れちゃうもん。それに目立ちすぎると厄介なことに巻き込まれるし」
「嗚呼。うるさい。殺すならさっさところしてくれればいいのに」
みんな好き放題しゃべっている。弾丸なんかもう絶望を表情で表している位、暗い。
「ひとりがひとり連れて行くしかないでしょ。暴れないように拘束できそ氷姫ちゃん?」
つまり氷でってことだ。出来なくもないけど、冷たいだろうし下手したら凍傷になってしまいかねない。
「布とかがあればなんとかできるけど。そう都合よく……」
「これでいい?」
「これって」
「予備のマスク。いくらでもあるから言ってね」
こんな具合で能力の歯車が噛み合ってほしくなかった。
「ねえ。ドラゴンに焼かれたこれなんだけど、これは捨てる場所ないよね?このままにもしてられないんだけど。仕方ないかなぁ」
楓さんがそう言って取り出したのは焼け焦げた刃物たちだ。そんなものどうしろっていうのか。たしかにだれかが踏んだり手に取ったりしたら危険だけど。
「おい。行くぞ気絶してるやつが目覚めるとやっかいだからな」
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