ファッションデザイナー・世界制服・晴れ時々

隆司りゅうじくんっ」


 氷姫ひめも叫んでみたものの、そこから先どうして良いのかわからない。助太刀しようにもあまりの規格外の戦いにどう手を出して良いのかもわからない。


「どうしたらいいのっ?」


 だから直接きいてみることにした。そこに答えなんてないかもしれないけれど、ドラゴンに効く攻撃なんてドラゴンに聞くのが一番だろう。


「わかんないよ。とりあえず気をそらしてくれればなんとかするから!」


 そう言われたってこの会話は相手のドラゴンにだって聞こえているはずで、あんまり気をそちらに持っていってしまうと弾丸がいつ暴れまわってしまうかもわからない。


「そんなっ。でも、やるしかないんだよね」


 こくりと隆司くんがうなずいた気がした。足元に氷を作って太く硬そうな足に突き刺す。それは突き刺さることなく砕け散った。それでも少しだけドラゴンが反応した気がする。


「そんな攻撃で怯んでちゃ、世界征服なんて夢のまた夢だ。さっさと終わらせないと。結局連れ戻されちまうな」


 ドラゴンはそれでも余裕そうに見える。でも、隆司くんはその余裕を見逃さなかった。


「晴れ時々氷だね。ナイスだよ氷姫お姉ちゃん」


 ドラゴンの体を器用にひねると尻尾を嬉しそうに大きくぶん回して足払いの要領でドラゴンの足を払う。それはきちんとドラゴンの足を宙へ浮かべる。


 ファッションデザイナーがランウェイを歩かせるために一生懸命考えたその衣装が堂々とお披露目したときのように、隆司くんは輝いて見えた。氷のかけらが太陽を乱反射しているからでもあるのだろう。


「この若造がっ!」


 相手のドラゴンの悔しそうな声が偽物の空に響いた。

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