すっぱい・ダダ漏れ・ハラスメント

「なんだよ。もうみんなやられちゃったのかよ。しかも、この程度の攻撃を俺に当てて満足しているようなやつらに。まったく、ほんと役に立たないやつらだよっ」


 氷姫ひめもその光景を見て、そりゃそうだと思う。いくら物語の力を込めているとはいえ、新聞紙でどうにかできるとは思えない。


「ただの新聞紙で、普通に殴りかかるわけないなじゃん。私の力を存分に込めた新聞紙だよ。そしてそれは起点になる」


 よくみるとその新聞紙には口裂け女の文字がデカデカと書いてある。一面を飾ったときのことのようだ。何年前だよいったい。


 そう思ったのもつかの間、目を疑うような光景が繰り広げられた。現れたのは無数の包丁、鎌、ハサミ。口裂け女に関係づけられた大量の刃物だ。


「都市伝説は拡散して、膨張した。その結果がこれよ。それを集めるためのアンテナがその新聞」


 要は一番、物語が力の影響を得られる遺物みたいなものだというのだろうか。そんなことができるだなんて知らなかったし、知りたくなかった。楓さんが恐ろしい存在に見えててくる。


「当時のダダ漏れだった情報は尾ひれが付きやすかったし、簡単に広まりもした。その真実など確かめる事もできず。ただ、恐怖だけが伝染した。ハラスメントなんて言葉もなかった時代にその脅迫めいた好奇心が撃ち負ける理由なんてどこにもなかった。その結果がこれ。それを全身で受けてみて」


 その言葉とともに無数の刃物が弾丸に向かって飛来した。

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