今日の・新聞・ほっこり

 はっきりしてく意識のなかで夏希なつきさんが目の前に倒れ込むのが見えた。


 さっきドラゴン姿の隆司りゅうじくんを見た気がするのだけれど。そんなほっこりとした光景があるはずもないと、目をこする。


 あれ。おかしい。ドラゴンがドラゴンと組み合っている。どちらも譲らず一進一退。その光景はほっこりするどころか迫力のあまりその場で動けなくなってしまうくらいだ。


氷姫ひめっ」


 永遠とわさんの言葉で慌ててそちらを振り向いてようやく、この状況が夢でもなんでもないことだと痛感する。


 弾丸の攻撃を必死に避けている永遠さんを守るために慌てて氷に盾を張る。


 今日の目的を少しの時間とはいえ見失っていたことを後悔する。力を使いすぎるとあんなふうに意識を失うなんて知らなかった。夏希さんも同じような状態なんだ。そして氷姫の意識がはっきりしたということは夏希さんの能力で目覚めさせてもらったんだろう。


 せっかく夏希さんがくれたチャンスだ。


「絶対に勝つ」


 何故か新聞紙を丸めて握りしめているかえでさんが走りながらそう言い放った。あれ。確か弾丸に撃たれて倒れたはずじゃあ。そこまで考えて、喜美子きみこさんがいないことに気がつく。氷姫ひめとおんなじように治療してくれたのかもしれない。


 楓さんのその勢いは凄まじく、永遠さんのことも意に介さず跳んでくる弾丸も気にせず、新聞紙で弾丸を殴りつけた。

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