セラピスト・リアクション・プロレスラー
「
分かっていると言わんばかりに頷く夏希さんはそれでも動こうとせずに
「ごめんね。
貫かれていたはずの体がもとに戻っていくのがわかる。こんなこと奇跡でしかないと思うのだけれど、夏希さんのリアクションを見ているとこれじゃあ、物足りないみたい。
セラピストとしての能力は喜美子さん由来のものなのだろうから仕方がないと思うし、それを使いこなせているだけ十分すごいと思う。
そうしている間にもドラゴンは近づいてきていて、氷姫は足止めしようと足元にいくつも氷を生み出しては行く手を阻もうとしているのだけれど、大きすぎてうまくいかない。アリンコとプロレスラーが戦っているようなものだ。それも致し方ない。しかし、諦めるわけにはいかない。そうしている間にも
つまり氷姫の限界はとうに超えていた。
視界がぐらりと歪んだかと思ったら景色が斜めになる。いや、倒れているのは自分だと他人事のようにそう思う。
「氷姫ちゃんっ」
夏希さんの声も妙に反響して聞こえてくる。もうだめなのかな。諦めないと決めていたのに、すぐに諦めたくなる。
「諦めちゃだめだよっ!」
懐かしくもあり聞いたことがある声が耳に飛び込んできた。反響しているようではあるが、くっきりとした声で耳へと飛び込んできている。
「なっ。同類?そんな話は聞いてないぞっ」
ドラゴンが驚いている声がする。
「僕がなんとかするから」
記憶の中の声からは子供っぽさがいくらか消えているが今もその天真爛漫な声は抜けきっていない。
でも。その姿が見当たらない。
「えっ。ドラゴンがもう一匹。それに……」
夏希さんも驚いている。当然のように彼女も面識があるはずだ。その彼女のが驚いているのだから。氷姫の意識が朦朧としているからの光景じゃないらしい。
「
もう一匹のドラゴンに向かって夏希さんはたしかにそう言った。
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