おとな・おっちょこちょい・ウソつき

 氷姫ひめは地面に倒れ込みながら、永遠とわさんが弾丸に向かっていくのを見た。


 痛みは思ったより少ない。衝撃というか驚きのほうが大きい。かえでさんが倒れ込んでいたが気がかりでならない。それこそ自分の体を金属の弾が貫通したことよりもだ。


 血が出ないようにすぐさま氷で止血したのがよかったのか、あるいはその冷たさで感覚が麻痺してきているのか。どちらにせよ都合のいいことには変わりない。


 永遠さんの援護ができればそれでいい。


 視線の先に喜美子きみこさんが楓さんのこところへ向かっているのが分かった。夏希なつきさんだってこちらへ来てくれている。


 後ろからドラゴンも追っかけてきているのをみておっちょこちょいだと思わないでもないが、ふたりも必死に考えての行動だろう。全員が助かりながら目標を達成する手段はもうそれしか残されていないのだ。


 永遠さんの様子はそれも必死な様相だ。氷姫の援護でようやっと互角。銃という武器の影響だろうが押され気味ですらある。


「氷姫ちゃん。大丈夫?」


 夏希さんが近寄ってきて手当を始めてくれる。そのおとなな行動に感心もする。ただ、後ろから追っかけているドラゴンがいなければの話だ。


「大丈夫です。それよりもはやく永遠さんを」

「ウソつき。それで大丈夫なわけないじゃない」


 夏希さんの手が当てられたところがぼわっと光り始めると痛みが引いていく。


 楽にはなるがドラゴンもどうにかしなくてはならない。永遠さんばかりに集中もしていられない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る