ホップステップ・自腹で・はお金じゃ買えない

「力はお金じゃ買えないか」


 夏希なつきは絶望の中、本音を口にしてしまう。これまでもそうだ。いくらお金を持っていてもどうにもできなことが目の前にドスンと置かれたとき、自分がいかに非力かを思い知らされる。


 喜美子きみこさんに最初会ったときもそうだった。初めて自腹で手に入れようとしたアイドルのコンサートチケット。あまりの人気のあまり入手できなくて、いくらお金を払ったところで手に入れられるはずのないところまで遠のいてしまった。


 使うはずだったお金の使い道に途方に暮れてしまったとき。偶然手に取った昔のアイドルコンサートのDVD。そこにいた喜美子さんに一目惚れだった。


 それまでどうしても欲しかったチケットなんて忘れてしまうくらい見入ったし、そのホップステップする姿に憧れた。私もそうなりたいと切に願った。


 そうしたら実際の喜美子さんが目の前に現れたんだから。もう驚くなんてものじゃなかったし。発狂もした。親切丁寧に物語の力のことを説明してくれた喜美子さんには感謝しかない。


 そこから喜美子さんアドバイスのもとアイドルになることできた。でも大変な毎日だった。人気はお金じゃ買えないし、仲間もみつけられなかった。


 完全に力不足。でも、そんな中でも喜美子さんがいたからこれまでがんばれたし、ここまでこれた。


「そうだが。なにも諦めることはない」


 喜美子さんはいつだってそう声をかけてくれる。


「喜美子さんは楓さんを。私は氷姫ひめのところに行くわ」


 ドラゴンに背を見せることになるけれど。その時は自分たちが盾になればいい。ふたりは一緒にそう思ったのだ。

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