食べる・かくれんぼ・オネェ

 お互い近づいていく中で動き出すタイミングをずっと見計らっている。永遠とわはその緊張感が実のところ好ましいと思っていたりもする。


 生きている実感なんてありきたりな感覚ではない。単に好きというわけでもない。おそらくは好奇心。物語というものに触れてから尽きることのない深み。その奥深くにあるものが知りたくて仕方がない。それを感じられるのがこの戦いの場面だったりするのだ。


「はっ。いいのかよ。もう間合に入ってるぜ」


 そう口では挑発してみても自分から動かないのは相手の間合におんなじように踏み入れてしまっているからだ。


 かくれんぼに近い感覚。見つかっているのだかれど、動かなければどうにかなる気がする。そんな状況。このまま食べることも飲むこともせず、延々とときが流れていくことだってあるような気がしてくる緊張。


 にやりと口元が緩む。嬉しくて仕方がない。これから見れる景色はきっと見たことがないものだ。


『あんたはいつか自滅の道を自らたどる。それがわかっていながらね。注意しないと引きずり込まれるよ』


 いつかオネェと慕っていた編集長が言っていた言葉だ。自分なんかよりもたすくのほうがよっぽどそれに当てはまるし、実際いなくなりやがったのだかれど、それにつられて一緒に足を踏み込んでいる自分の結局のところ一緒だった、


 まあ。佑は自ら踏み込んだというより巻き込まれただけ。だとしたらやっぱり自分は自分で道を選べているんだとそう思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る