びしょ濡れ・かわいい・鎖帷子
「向こうは盛り上がってるみたいだな。こっちも久しぶりの対決だ。楽しもうぜ」
組長は鍔のない刀を引き抜く。鍔迫り合いなんて想定していない持ち運びだけを考えた、殺傷力の高い刀だ。永遠は自分が持っている刀に目をやる。鍔あるものおそれは大きくなく装飾も少ない。
氷で出来ているのに溶けることはなく、手に冷たさも伝わってこない。それも自由自在なのは便利としか言いようがない。戦いの最中にあたりがびしょ濡れになるなんてそれどころではなくなってしまう。
向こうの刀とこちらの剣。用途は同じようなものだ。ただ相手を倒すためだけのものそれも即座に致命傷を与え反撃を許さないためのもの。暗殺用。
だから戦いはそんなに時間がかからないはずだ。でもその戦いの合図がなかなかお互いの中で折り合いがつかない。ずっとにらみ合いだ。
先に仕掛けたほうが負ける。そんな空気がふたりの間を流れ続けている。だからだろう。話をしてその流れを断ち切りたいように見えた。
「そっちの着込んでる鎖帷子は良いものなんだろうな。俺のこれじゃとても貫けないくらい」
仕込んできたものを言い当てられて少しだけ動揺するが。よく観察すればバレてしまうものなのもわかっていたことだ。落ち着けと自身に言い聞かせる。
「念には念をってね。手の内がわかっているのだから、対策くらいするだろう。それよりそっちは良いのかい。見たところ何かを仕込んでいるようには見えないが」
組長の着込んでいるものに氷姫の剣を防ぐような力がないのは見ればわかるほどだ。
「ああ。もちろん。俺はそんな中途半端な覚悟でここまで来てないんでな。仲間の分までやらせてもらうぜ」
そう動き始めた組長に永遠は身構えた。
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