すっぽんぽん・ヒロイン・係長

「あー。ねぇ。私の目がおかしくなったのかな?」


 かえでは黄昏書店の帰り道、ふと自分がどこにいるのかわからなくなるほど自分の目を疑った。車が一台通るのがやっとの広さだ。そこのまんなかに誰かが立っていたのだ。


 薄暗いからはっきりとは見えない。


「あー。多分。おかしくなってはないよ。私にもそう見える」


 夏希なつきさんも自分の目を疑っているみたいで目の前にあるものを信じられないでいる。


「まあ。よくいる変出仕者だな。気にせず目を合わさず通り抜ければ大丈夫だろう」


 喜美子きみこさんが余裕なのが不思議でしょうがない。子供だから気にならないのだろうか。そんなことはないだろう。いくらなんでもあんなものをを見せつけられて冷静でいられるわけがない。


「喜美子さんもっとヒロイン争いに参戦したほうがいいよ?こんなの悲鳴あげておいたほうが良いって絶対」

「そうよ。わざわざ隣通りすぎる必要ないでしょ。なんでそんなことしてあげる必要があるわけ。そこの道をそれましょうって」


 夏希とは気が合う気がする。短い時間だけれどそれは分かる。


「そっちに道があるのか。じゃあそっちでいいな。ふむ。あのすっぽんぽんを相手にする必要はないのはわかるが無視すればいいだけではないのか」


 喜美子さんはどこか納得していないような感じだけれど、無理にでも連れて行く。こちらをちらりと見ているすっぽんぽんの変質者を警戒しながら道を曲がる。


「あのー。係長。こんなところでなにしてるんですか?」


 変質者に声を書ける人がいるのを遠目に見ながら、関わりたくないと思うだけだ。

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