虫・みちくさ・アレルギー

「ねー。なんでこんなところ散策しないといけないのー?」


 かえでたちは黄昏書店から少し離れたところを3人で歩いていた。楓からしたら宛もなくだ。最初は見知らぬ土地を見ているだけで楽しかったのだがそれも次第に飽きてきた。


「氷姫とやらが武器を創れるようになるまで時間がかかるというのだ。それまであの書店で待っているだけでもつまらないだろう。珍しい土地だ。少しくらい見て回ってもいいじゃないか」


 喜美子きみこさんと呼ばれている少女は落ち着いた様子で前をてこてこと歩いている。到底その後ろ姿からは想像できない冷静っぷりだ。


「そうね。喜美子さんの言うとおりだわ。そもそもあのつとむさんの言うことをないがしろにするとろくな目に合わないからね。勉さんが言う事ならそれこそこうやってみちくさしてたほうが気楽ってものよ」


 喜美子さんの横を歩く夏希さんがそうなにかを思い出したかのようにそう言葉にする。昔苦虫を噛み潰したような経験でもしたのだろうか。


「そうは言ってもこのあたり虫が出るし、そのあたりの草にアレルギーだってあるんですよー。それに待つ理由もよくわからないんですよ」

「まあ、そう愚痴ばかりこぼすんじゃない。もうすぐこんな時間が過ごせることが幸せに思うくらい忙しくなるよ」


 未来でも見通しているのか喜美子さんはそういった。

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