すべりだい・成人向け・は永久に不滅です

 滑り台を滑っているのは氷姫ひめ自身だ。でも、それを遠目で見ていることにより氷姫はどうしようもなく不安になる。自分を見るなんて経験は初めてだ。それでも、それに違和感を覚えないのはこれが夢なのだと気付いているからだ。


『なあ、氷姫。いつまでそうしているんだ。早く帰って続きをするんだ。お前のその力を欲している連中はまだたくさんいるんだ』


 やだ。そう大声を出したくなったけれどそれに意味がないことを理解して声を出すのをやめる。


『……うん。わかった』


 あまりにもごねるから連れてきてもらった公園の滑り台だ。しぶしぶだけれど、たまに見せてくれたやさしさ。でもこの後のことを考えたらその優しさなんて少しの風で吹き飛んでしまうくらいだ。


 この後、家の関係者のために力を使い続けるのだ。それが何に使われるかもわからないまま。氷の刃を作り続ける。でも今ならそれがなんだかわかる。氷の刃は暗殺に向いている。凶器が残らないのだから都合がいいことが多い。


 いまさらながら後悔したところでそれがどうなるわけでもないのは分かっている。自分が手を貸していたことがどれだけ罪深いかも想像しただけで背筋が凍る。


 成人向けの話とは思う。とてもじゃないがみんなには話はできない。でもどうして急にこんな昔の夢を見たんだろうか。


 ああ。つとむさんに武器を創る練習をさせれれているんだった。でもこれは誰かを殺す物じゃない。佑さんと、隆司くんを助けるためのものだ。


『ああ。神永は永久に不滅です。ってな全部お前のおかげだ』


 そう笑う。実の親の顔は夢の中だからなのかうまく思い出せなかった。

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