ずっこけ・すくすく・超小型

「すくすくと成長してくれればすぐにたすくを助けに行けるよ」


 氷姫ひめの後ろでそう焚き付けてくるつとむさんはなんだか嬉しそうだった。


 気のせいじゃないよね。


 マッサージが終わったあとから妙に勉さんがウキウキしていたように見えた。これまでに試したことがないことをしようとしているのか。知的好奇心が旺盛なのだろうか。とてもそんなふうには見えたかったけど。


「超小型に変化し高性能な武器を作れるのは氷姫だけだ。氷を操れる君ならばきっと創れる。永遠とわが振るい道を切り開くための剣を。そのためにには正確にその性能と形状を把握しておく必要がある」


 なんどか受けているその前口上はそろそろ覚えてしまいそうだ。その繰り返される工程に辟易としたのか勉さん以外の人は地上へ戻っていってしまった。


 立ち去る際に喜美子きみこさんにマッサージのお礼をしたら気にするなと言われてしまった。なんだか不思議な感じがする子だ。どこか、隆司りゅうじくんに似ている気がする。どこがかはまったくわからないが。


「聞いているのか?そのままずっこけてしまえば佑を助けるチャンスを逃すことにもなるんだぞ」


 厳しい言葉とは裏腹な笑顔の勉さんはまったくもって説得力がなかった。

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