マッサージ・ドクター・VIP

「それでなんで私はマッサージされてるんですか?」


 マッサージしてくれているのは喜美子きみこさんだ。つとむさんが氷姫ひめたすくさんを助けるカギと名指しされたあと、急に横になるように告げられた。


 黄昏書店に地下室があるなんて初めて知った。そこまで案内されながら勉さんは喜美子さんと何かを相談していたみたいだったのだけれど、まさかそれがマッサージのことだとは思いもしなかった。


 肩を中心に背中の方から押され続ける。氷姫とあまり変わらない喜美子さんの指は氷姫の成長しきっていない体によくフィットしている。まさかそれを狙っての人選なのだろうか。


「簡単に言うとリラックスしてもらうためだ。それからあるものを創る練習をしてもらう」

「あるものって」


 その時、喜美子さんの手が腰辺りにきてくすぐったくって言葉が止まる。


「こんなVIP待遇でいいんですかね。ちょっと気持ちよすぎるんですけど……」


 薄暗い地下室の効果もあってかだんだんと眠くなっていく。永遠さんも治療に専念しているというのにこんな状況は気が引ける。


「ドクターじゃないからな。しっかりとしたマッサージはしてやれない。でも、話を聞く限り必要なことだ。ずっと根詰めていたんだろう。今だけは少し休むといい。それがきっと佑を助けることにつながる」


 ほんとにそんな都合のいい展開になるのだろうか。そう思いながらも氷姫の意識は薄れていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る