覆面・ノンフィクション・バーチャル

「あんたのお仲間のことでもう一度聞きたいことがあるんだ」


 永遠とわさんがぐいっと前に出る。お化け屋敷を抜けたらちょっとは頼りがいが出てきたので本調子になってきたようだ。


「ふぅん。いきなりきて不躾に質問されたところで正直に答える必要なんてなさそうですけれど。まあいいわ。ちょうど、料理が出来上がったところだし、味見係がほしいと思っていたの。よかったらそこの椅子に座っていて待っててくれない?」


 魔女はそう言って鍋を持ったまま机を示すと、マイペースにことを進めていく。永遠さんがこちらをちらりと見るけれど。どう考えても大人しく従っておいたほうがいいだろうと思い先に進んで椅子に座った。


 ノンフィクションでは見ないような家具の数々にこの部屋が物語で作られた部屋なのが見て取れる。少なくとも氷姫ひめはその目に映るものに好感が持て、魔女と気が合うのではないかと密かに思い始めていた。


 ファンシーな家具や小物たちがバーチャル空間にいるような感覚にさせてくれる。この場所が好きな人に悪い人はいないと思わせてくれる。


「氷姫は肝が据わってるなぁ。怖くないのかよ、さっきの鍋の中身見ただろ。あれ食べる勇気は俺にはないよ」


 はあ。言葉にはしないけれど結局情けないことを言い始めた永遠さんに呆れてしまう。こんな時くらい大人びて覆面を被ってくれれば頼るのにと思わないでもない。

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