ビーム・自信作・ホームレス

「あれ。これおいしいですね」


 差し出されたスープは黒く濁っていて中にないが入っているのかわからない。ふわふわと浮かんでいる紫色の粒がなんなのか検討もつかなければそれに絡まっている葉も見たことはない。


 それでも、勢いよく飲んでみたら意外とさっぱりしていて旨味が口の中に広がって驚いてしまった。


「うわぁ」


 そのビジュアルに隣で永遠とわさんが引いている。氷姫ひめはその度胸のなさに引いてします。おいしいのだからチャレンジすればいいのに。


「でしょぉ。これ自信作だったのよ。わかってくれて嬉しいわ。これ人に食べてもらったのも初めてだからちょっと不安だったのよねぇ」


 すっかり上機嫌の魔女は嬉しそうにニコニコしあんがらこちらを見ている。どうやら気に入られてしまったようだ。


「ところであんたたちなんでこんなところに来たの?ホームレスで家を探してるわじゃないでしょ?」


 不思議がっているけれど、あんまり警戒はされていないみたいだ。そもそも永遠さんはどういう情報でここまできたのかわからないままだ。


「以前ここに訪ねてきた魔女探しの男の子を知ってるだろ?やつの行方を追っているんだ。あんたならしてるんじゃないかと思ってな」

「あー?東毛区の魔女を消しちゃったビーム撃つ子でしょ。覚えてるわよ。あのときは大変だったんだから。なんで居場所を教えたのとか問い詰められてもねぇ。あんなことしでかすなんて思わないじゃない」


 魔女も大変だったみたいで表情がどんどん曇っていく。


「でも、私達も調べてるんだけど、どうやら他の組織の介入があったみたいよ」


 新しい情報に氷姫は少しだけ心が跳ねるのがわかった。

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