ちゃっかり・紳士・パンツ

「ちゃっかりしてんのね。調べ上げてるんじゃん。そんなのどうやって手に入れたんだよ」


 たすくが手にしている書類を覗き込みながら永遠とわが問いかけてきた。あんまり口にしたいことではない。能力を使って事務所らしいところに忍び込み名簿を借りてきたなんて言えやしない。特に氷姫ひめが聞いているのだ。そんなことを聞かせられない。


「まあ。いいじゃないかそれより、これさえあれば誰が知ってるかわかるんだろ?」


 話を逸らそうとしているわけではない。一刻も早く隆司りゅうじくんを助けたい一心からだ。


「まあな。そいうのが得意なアイドルも多いってね」


 あたりに人がいないのを確認すると永遠が返信してフリフリのアイドル衣装姿へと変わる。いつも見ても不思議だ。コピーする佑ほどじゃないと思うのだけれど永遠も十分恐ろしい能力を持っていると思う。


「さ、やるよ」


 紳士風の人がアイドルになる姿は受け入れられない部分が多いが、こればかりは仕方がない。永遠の願望を形にしていると思うと複雑な気持ちにもなるが、それを言い始めたら自らにも返ってくる。


 永遠が胸元から取り出したのはチェーンの付いたペンダントだ。それを名簿の名前のところに宙に浮かせながらひとつひとつないかを確認するかのようにずらしていく。


 そうして、ある名前のところでペンダントが急に揺れ始めた。


「おーけー。ここにいるな」


 やってきたのはお化け屋敷だ。氷姫なんかはなぜか目をキラキラさせてこの場所に対して興味津々だ。


「お化け役でもやってるってこと?っていうかあんなのでわかるのか」

「もちろん。ダウジングはそれなりに根拠があるものだぞ。語り部として使えばそれも増幅される。それによれば、まあここにいるってわけだ」


 パンツが見えそうなくらい短いひらひらなスカートを翻して永遠が自慢げにしている。遊園地の雰囲気もあってどちらかというとキャストのひとりに見えなくもないし、何人かは永遠に注目している。


「ね。いこ」


 氷姫がそんなことを気にする様子もなく佑の手を引っ張り始める。色々なことに戸惑いながらもお化け屋敷に足を踏み入れた。

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