初体験・バックダンサー・正々堂々

「たっく。正々堂々と戦ってくれれば勝ち目もあったのによー。あのおばさんなんであんな簡単に逃げたんだろうなぁ」


 永遠とわがぶつぶつと文句を言うをじっと聞いている。

 そんなの目的が隆司りゅうじくんだったから以外ない。わざわざ黄昏書店にまで押し入ってくたのだ。目的を達成したのだからそそくさをその場所を退散しただけだろう。


 でも、気持ちはわからないではないので、それをわざわざ口にはしない。真正面から戦えていればと思うと悔やまれる。


「で、なんでここにこなきゃいけなかったんだ?」


 場違いなのは間違いない。永遠が疑問に思うのも無理はない。ここの場所に馴染んでいるのはたすくのとなりで目を輝かせている氷姫ひめだけだ。


「すごい……」


 こんなもの見るのも初体験だよな。時間があれば思う存分遊ばせてあげたいのだけれど。隆司くんが心配なのでそうも言ってられない。


 ここは割と大きめの遊園地だ。ここにあの魔女の存在を知っている人がいるのだという。でも、どこにいるかまではつとむさんにもわからないと言っていた。


「また、今度ゆっくり来ような」


 あたりを見渡すけれど。あいまいな人物像と名前を聞いただけだ。それだけで探せるはずもない。事前にアポイントメントを取りたかったのだけれど、それもできないと勉さんに言われてしまった。


「うんっ」


 嬉しそうにする氷姫に気合が入る。なんとしてでも隆司くんを取り返してここにもう一度来るのだ。


 夕方近くになってパレードがあたりを騒がしくし始めた。豪華絢爛なそれにメインの登場人物とバックダンサーが乗っている。


 氷姫の注意がひかれすぎる前にその場をあとにした。

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