おりがみ・ぞうさん・の刑

「わぁー」


 隆司りゅうじくんがそうわかりゃすく感嘆の声を上げる。本当は声を抑えたほうがいい場所なのだけれど。その声を上げる気持ちはよくわかったので、止めないでおく。


 首が痛くなるまで見上げなければならないほど大きなその図書館は隆司くんのリクエストだ。


 隆司くんが行きたいと行ったのはまさかの図書館だった。それも大きな図書館。たすくからすると行きたいと思ったどころか存在すらをしなかった場所。


「ぞうさん!}


 そうざんというか、銅像なのだけれど。そんなものがお迎えしてくれる図書館なんて聞いたことがない。


「ほら。隆司。静かにしよ」


 氷姫ひめがお姉さんらしく隆司くんをたしなめている。それを微笑ましいと思いながら眺める。


「図書館は静かにするもの」


 本屋さんに住んでいるのだからそのあたりは教えられているのだろう。自分でそう気づいて言い始める。つとむさんがそのあたりを教えていないはずもない。


「おりがみの本が読みたい」


 最近ハマっているいるのだろうか。これだけ本があればどこかにはありそうだけれど。これだけあると探すのも大変そうだ。


「これで調べられるよ」


 氷姫がタッチパネル式の端末を操作している。タイトルさえ入れればどこの棚にあるかを教えてくれそうだ。


 これがなかったらなにかの刑みたいなことになるのだから当然なのだけれど。進んでいる技術に妙に感心してしまった。


「おりかみっと」


 おやと不思議なことに気づく。氷姫は目覚めたばかりで現代の技術に詳しいなんておかしいのだけれど。迷うことなく操作している。適応力すごくないか。


「佑さん。どうかしました?」


 氷姫が佑の視線に気がついたのか不思議そうな表情を返してくる。


「い、いや。なんでもないよ。ほら。探しに行こう」


 出てきたレシートを頼りにおりがみの本を探しにむかった。

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