ひみつの・大きな大きな・主に
「思ってたより大きいんですね」
目の前の大きな大きな氷の塊から流れ出る冷気を感じながらその大きさに圧倒されていた。
案内されたのは街中から一時間程度で行ける海岸だ。どうしてこんなところにと思ったけれど、船に乗せられて更に一時間を用してたどり着いてようやく理解した。
海からでしか入れない洞窟があった。船を降りて少し進むと見えてきたのはこの氷の塊だ。
「写真で見たものより大きく感じます」
ふう。と編集長はため息を付いた。
「大きくなったんだよ。最初はもっと小さかった。ほら。主にあれのせいだ」
洞窟の天井あたりを顎で指し示すとそこからぽつりぽつりと水滴がたれているのが見えた。
「あれが氷を大きくしている原因だ。ああやって延々と垂れ続けている」
「何が起きてるんですかこれって。物語の力としても異様すぎませんか」
その質問が来ることはきっとわかっていたはずなのにそれでも編集長の表情は曇ってしまう。
「これは封印なんだよ。彼女が自分自身の力を抑え込むために作ったね」
そう編集長は氷をゆっくりと撫でる。それは冷たいのか表情が更に曇っていく。
「これからする話はひみつの話だ。口外しないと約束できるかい?」
そう問われてもすぐさまうなずくことはできなかった。それだけ真剣な表情をしていたし、この氷から感じる異様な空気を受け入れられることはできないとそう思った。
「……ええ。約束しますよ。ここで見たものも聞いたものも口外はしません」
なぜ初めて会った人間をここまで信用してくれるかわからないが、その信用に応えなくてはならない気がした。
声が震えていたのを必死に隠しながら返事をした。
「君は優しいのだな。こんなところに急に連れてこられても動じていない」
ふっと編集長がすこし笑った気がした。
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