将軍・パンチ・飲料

「具体的にはどうすればいいんですか。氷漬けの姫様って比喩かなんかですか。実際氷漬けなわけじゃないでしょう?」


 いくら物語の力が働いていたとしても、氷漬けを実現することは不可能に近いはずだ。それこそ世界に認識されない場所で長期間ってことになる。そんなことが可能とは思えない。


「実際氷漬けだよ。これを見てくれ」


 編集長が差し出してきたのは1枚の写真だった。その写真を覗き込むと少女が本当に氷の中に閉じ込められている。考えてるそばから否定されてしまった。


「これ本当ですか。合成とかじゃなくて」


 そう言ってしまうほどその光景は異様に見えた。


「合成なんかじゃないよ。本物だ。今ものそままになっている。その彼女を救い出してほしいのだ」

「どうやってですか。まさかパンチで割れるとかじゃないですよね」


 それが出来るのであれば永遠がやってしおうなものでもある。わざわざ頼まれているのだから違うのだろう。


「詳しくは現地に行ってから説明するよ」

「えっ。編集長も一緒に行くんですか」


 それに驚いたのは永遠の方だった。飲んでいた飲料を吹き出しそうになるのをなんとか耐えていた。


「ああ。もちろんだよ。私がいかなくては話が進まないだろう」

「まあ。そうかもしれないですけど。締切近いっすよ」


 永遠がスケジュールの書かれた白板を指さした。そこには「締切!」と大きく書かれている。


「ああ。それは永遠。お前がなんとかしてくれ。お前なら出来る」


 それを聞いて永遠の表情が初めて見るものへと変わっていく。


「そりゃないっすよ」


 永遠の言葉が編集部に響き渡る。


「ほら。将軍が怒り始める前に作業に取りかかれ」


 編集長が将軍と呼ぶ人物が気にもなったけれど、それより編集長と行く先が気になってしょうがなかった。


「さっ。行こうか」


 その言葉にたすくは素直にうなずいた。

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