氷の中のお姫様と編集長
和漢方職人・100年もの・博多一口鉄板餃子
「ねー餃子食べたいー」
七日間戦争のあとしばらくなにも起きていないし、
「餃子かぁ。この前近所に博多一口鉄板餃子屋さんできたから。みんなで行ってみようか」
久しぶりの依頼がない時間がちょっとだけ嬉しくもあったし、寂しくもあった。刺激が多すぎた時間を長く過ごしすぎたのだと思う。
「わーい」
ふと、時折思い出すのだ。あの七日間戦争は悪い夢だったのではないのかと。そう思う。自分の手が血で赤く染まっていくのをイメージしてしまう。それが起きるたびに自分の犯した罪の意識にさいなまれる。
「
黄昏時に犯したことだ。世界が認識するはずもなく、彼は最初からいなかったことになった。それは世界が知らないこと。つまりは誰もが知らないこと。でも、その枠から外れた語り部だけはそれを認識している。
「佑?」
勉さんに肩を叩かれて、ビクッとして始めて声をかけられていることに気がついた。
「疲れているなら知り合いの和漢方職人でも紹介しようか?」
「あっ。いえ。大丈夫ですよ。ちょっとぼーっとしちゃって。餃子でしたっけ。いいですよ」
とっさに答えてしまったけれど、適当じゃなかっただろうかと心配になってしまう。
「そう?100年ものの漢方とかよく効くんだけど」
それは本当に良いものなのかと疑問にも思うけれど、勉さんが言うと信憑性がます。語り部なんてなんでもありの世界だ。効くといえば効くのだろう。
「ほんとに大丈夫ですって。さっ。餃子食べに行きましょう」
そう言って扉に手を掛けたその手はやっぱり血で赤く染まっているように見えた。
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