ものまね・学校・ろくでなし

「こ、こんなものまねで私の力が、夢が破れるのか」


 穴の空いた壁から冷たい空気が流れ込んでくるのがわかる。それが金属である鎧を冷やしていくのもだ。そういえば、こんなに動きづらそうな鎧なのにどうしてこうもらくらくと動かせるのか自分でもわかっていない。たすくは自分のコピー能力の仕組みがわからない。


「夢も何も周りを巻き込んでまで叶えたい夢なんて」


 剣同士がぶつかり合う。聞き慣れない音があたりに鳴り響く。力で押されるかもと思っていたけれど。なにも考えることなく互角に渡り合えていることに不思議に思うけれど。これが物語が与えてくれる力なのは今更だ。

 でも、今回の力は明らかにこれまでよりも強力なのがわかる。力に使われている気すらする。


「こんなことがあって。あってたまるかー!」


 感情が高ぶったのか、怒りの限界値が突破したのか、印象と違う声の出し方をする彼に驚いてしまう。それでも、相手の剣を弾き返しながら切り替えして鎧の上から斬撃を食らわせる。


「このろくでなしが!」


 口ぶりや表情がもはや、もともとの彼ではない。それほどに冷静さを失っているのか。


 学校のクラスでこうやって優等生が怒っているところを何度か見たことがあった。優等生ほど自分の思いどおりのならないとこうやって怒り出す気がするのは気のせいだろうか。


 そう思いつつ、自分の記憶は物語の中にしかないのだと気付き。そいう設定の人物が多いのかも知れないとぼんやりと思う。


「ろくでないはあんただろう!こんなひどいことして。黄昏時を無理やり伸ばすなんて世界を壊す行為。許されるわけ無いだろう!」


 よろけたままの彼に向かって剣を振り下ろす。何も守られていない頭へ向かってだ。

 彼はそれを防ぐくとはできず、その剣を首筋で受けてしまった。それと同時に血が吹き出す。

 その光景を自分でやったとは到底思えず、ただ見ていることしかできなかった。

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