エクスカリバー・おこさま・リンスin

「おこさまは美味しそうに食べるなぁ」


 隆司りゅうじくん泥棒はそんなことをのんきに言いながらも自身も美味しそうに食べているのだが、だれもツッコミはしない。


「あんたもちゃんと美味しそうに食べてるけどね。女装泥棒さん」


 そんなことはなかった。夏希なつきがしっかりとツッコミを入れている。しかも余計な一言も付いてだ。


「なんだよ女装泥棒って、だれのことだよ」

「あんたのことでしょ。なんでわかんないのよ。そもそも能力使ってなんで女子にばっか変身するのよ。なんの趣味よ」

「しょうがないだろ。そういう物語なんだから。男だって動物だって女子に変身するんだよ。それに盗んでない。自分のを取り戻しただけだ」

「だれが信じるっていうのよそんなの」

「別に信じなくてもいいよ。そんなことより気にしなきゃいけないことがあるんじゃないのかよ。いったいありゃなんだ。黄昏時を自由に制御できるなんて何者だよありゃ」

「黄昏時ー?」


  会話を聞いているつとむさんはなんの反応もせずにカレーを食べている。


「勉さんは知ってるんでしょ?」


 その態度が納得できなくて少しきつい言い方をしてしまう。


「知っているわけじゃないけど、心当たりならある。最近語り部たちを集めてなにかを企んでいるらしい組織がある」

「暁とかじゃなくて?」


 夏希がそう返すが、知らない言葉が出てきて話を止めて聞くわけにもいかず、一旦スルーする。


「暁とは違う。エクスカリバーとか名乗ってる」

「なんで聖剣。意味わかんない」

「それはこっちだってわからないよ。名乗ってるんだからそう呼ぶしかないだろう。目的も不明だ。ただ、強い力を求めているのは間違いない。予選って言うのもそのためのものかもしれないってだけ。そして、黄昏時が終わらなかったっていうのもどうやら局地的みたいだよ。ここからは観測できていない」

「えっ。あれだけ大騒ぎだったのに」


 隆司くんを除いた全員が驚く。


「なんだよそれ。そんなことできんのかよ」

「出来るんだろうね。それが起きたから君たちが疲弊している」


 信じがたいことに沈黙がその場に流れる。


「さ。食べ終わった泊まっていくといい。もう夜も遅い」


 その言葉にそれとなく全員が頷いた。


「ねえ。ここってリンスinシャンプーじゃなくてちゃんと別れてるやつでしょうね」


 夏希だけは違う心配をしていたみたいだけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る