モンスター・の極み・デリバリー

「おっ。大変だったみたいだねぇ。ニュースになってたよ」


 へとへとで黄昏書店に帰るなりたすくの顔を見るなりつとむさんが表情一つ変えずにそんなことを言ってきて、当然のようにびっくりする。


「ニュース!」


 なぜだか隆司りゅうじくんも元気にそう言ってきて。嘘だろと内心、そう思ったのだけれど。


「モンスター変質者、アイドルイベント開催中のホールで強行。出番待ちの出演者を襲おうとするも慌てて逃走って。ネットニュースになってるよ。防犯カメラに写ってたみたいだね」


 そんなことがあるのかと思うけれど確かに考えてみれば防犯カメラくらいあるだろう。


「じゃあ、魔法とかもニュースに?」


 派手に使った気がする。姿も変えた。しかしよく考えてみれば相手もそうしていた。それがニュースになったのならもうちょっと違う見出しになっていそうな気もするのだけれど。


「まあ、その辺りは世界が認識を変えちゃうから普通の人からしたら、魔法を使っている君も変質者ってことに書き換えられて見えてるんだよ。アイドルを襲うなんてなかなかやるね。変質者の極みと言ってもあながち……」

「いや、違いますから。向こうが変質者ですよ。アイドルの衣装を盗んだんですから。おまけに語り部だったし。なんだっていうんですかあれ」


 妙なことを口走る前に勉さんを止める。隆司くんは止められなかったみたいで変質者ー!と喜んで恐ろしいことを口にしている。


「まあ、災難だったということだけだよ。デリバリー頼むけどなにがいい?今日はご馳走するよ。まだ七日間戦争も半分手前だ」


 勉さんにしては珍しい提案に驚きはするが、好意を断るわけにはいかない。


「ピザがいいです」

「ピザ―!」


 目を輝かせて喜んでいるのは隆司くんだ。そんなによろこんでもらえるなんて思わなくてびっくりする。


「よし。じゃあ、とりあえず何ピザがいいかメニュー見て決めようか」

「うん!」


 言い出した佑をほったらかしにしてふたりで楽しそうにメニューを眺めだした。ほんと仲がいい。


 それにしても。ほんと、この七日間戦争の裏で何が起きているのか。それがわからなくてもやもやし続ける。

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