帰国子女・お仕事・土下座

「帰国子女にバーチャルに女神に高校生に地方公務員にお仕事に天然。いろんなアイドルがいるもんなんだなぁ」


 思わず感心して声が出てしまう位には古今東西、様々なアイドルたちが集まっていた。天然というのはもちろん夏希なつきのことでそれなりに大きく扱われているのを見ると本当に有名なのかもしれない。


 そんなことを考えながらも先ほどのほむらと呼ばれていた彼の事が頭から離れない。もしかしたら九重佑ここのえたすくの過去を知っているかもしれない人物。九重佑の過去を知りつつ記憶を保持していると言う事は語り部であることは間違いなく、口ぶりから七日間戦争の参加者であることも間違いない。


 どうやって聞けばいいのだろうか。素直に質問したら教えてくれるものなのか。向こうはこちらを見て驚いていたし不思議がってもいた。つまりはきっと過去になにかあったのだ。きっと。


 それがどんなことであれ受け入れるつもりではあった。しかし、もし語り部としての過去があったとしたら。物語の自分がその人物の存在を奪ってしまったのだとしたら。それを受け入れられる覚悟が出来ているのか。それは分からない。


 土下座でもすれば許してもらえるのか。


 わからない。九重佑になる前の人物がどういう人物だったのか分からないのだから当然だ。つとむさんは似た波長の人に成り代わる確率が高いなんて言っていたからもしかしたらこうやって、うじうじと考えすぎてしまうタイプなのかもしれない。そうであったらなら許してくれるのだろうか。


 いや。許せないな自分なら。


 そう思う。自分に成り代わり、生活も親も、友達も、すべてを代わりに手に入れているのだ。色々なつじつまを合わせるために世界が補完しているとしても。元がある存在。そんなことを許せるはずもない。


 だから。より一層知らなくてはならないと思った。自分の過去を。九重佑になる前の人となりを。


 だからと言って何をしていいのかわかっているわけじゃないのだけれど。とりあえずあと5日。この七日間戦争の間に何かが起こる。そんな予感だけは高まっていた。

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