双子の魔法使い

心の削り合い・ニコイチ・とにかく明るい

「「 お兄ちゃんは、僕たちを止めに来たんじゃないの?」」


 ふたりそろってまるでニコイチだと言わんばかりの揃いっぷりのセリフに内心、悔しさがこみ上げてくる。実際手も足も出ない状況からだ。

 熱いやら冷たいやら、絶え間なく飛んでくる魔法みたいな攻撃を避けることは出来ず、さっきから身体が痛くて仕方がない。

 物語の力で受けたこのダメージとも言えるこの症状はことが終われば自然と治るよ。そうつとむさんが言っていたのを思い出す。

 そうは言っても受けすぎると死んじゃうから気をつけてね。そうとにかく明るい表情で言われたのが逆に怖かったのが印象的だった。


 勉さんに言われて、やってきたのは地方の海沿いの小さな町だ。


『不審な事件が起きている町があるので調べて着てほしい』


 そう静かに淡々と、反論することを許さない口調でそう告げてきたのは本の整理をせっせとしていた時だった。


 有無を言わさず、世界一の書店らしい黄昏書店で働き始めて、慣れることも出来ずにオロオロといたから、ちょっとだけホッとしたりもしたのだけれど、まさかこんなに攻撃をされるとは思っていなかったので、今は素直にここにいることを後悔している。


 心の削り合いにしては物理ダメージが大きいんだよなと心の中で文句をつける。

 勉さんいわく物語の力は心の力。特に感情に由来することが多いと教えてもらっていたから、もっと精神的に辛いのかと思っていたのだけれど、そんなことはなかった。

 中学生にしか見えない相手は無邪気に攻撃をしてくる。遊び半分でこうやって、通り魔事件を起こしていたらしい。

 ある程度ダメージを与えてみてください。勉さんの言葉を思い出しながらどうしたものかと頭を悩ませる。

 隙の無い連携攻撃に反撃の術を見いだせないのだ。


「「時間切れみたいだね」」


 突然攻撃が止んだ。水平線に沈んでいった太陽は確認したのだが、その光がここまで届かなくなってるのだ。

 昼でも夜でも無い時間。その時間だけが物語の力を使える短い時間。


「じゃあ。またね」


 気がつくとひとりしかいなくなった彼が去っていくのを身体が痛すぎて見送ることしか出来なかった。

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