DIY・世界一の・絶滅寸前
「この机DIYしたんだよ」
嬉しそうに話しかけてくる
「そんなに気にすることないと思うな。この机みたいに作られたものは確かにそこにあるんだよ。元の材料がどうであれ」
その言葉にゾクッとする。自分の材料なんて考えたくもないのだけれど。これまでの話が本当ならば確かに存在するはずなのだ。
「あの。僕の元になった人って……」
恐る恐る
「それは、考えるだけ無駄なので諦めることをおすすめする。私達にも認識は出来ないことだ。もともと知り合いだったのであればともかく今はもう知る手段がない」
「なぜですか。必ず居るはずんなんですよね」
代わりにいなくなった人。そう続ける言葉が口に出せなかった。まだ認めたくないのだ。
「いたよ。でもそれを認識できる人は多分いない。さっきも話したけど世界の認識は強固なんだ。君がこの世界で生きているってことは世界が存在を認めている証拠。つまり、元の人は世界の認識から外された。どうやったってたどり着けない」
「じゃ、じゃあ両親はいったい」
「世界がそう認識を変化させた。君からしてもご両親からしても親子と言う関係は本物だ。心の問題だけじゃない。ちゃんと血の繋がりもある。ただ、君が物語の力をこの世界に滲み出すことができること以外はなにも変わらない。そもそも、物語の登場人物がこの世界に定着するほど相性がいいとも言える。もともとの人格も今の君と大差ないのかもしれない」
「そんな問題じゃない」
上手く理屈では説明できないけれどそう言う感情が湧き上がってくる。そうじゃないんだ。今がどうとか、そうじゃない。
「さっき認識できる人が多分いないって。いる可能性があるってことですか」
「ああ。可能性はある。でもそれは絶滅寸前の動物が絶滅したことを確認することよりも難しい。それを認識できる人は、この物語の力に触れていなくてはならないからだ。物語から力を滲み出すことができるほんの僅かな人しか居ない。その中で君を昔から知ってる人。そんな人がいるとは思えない」
ふぅ。と息を吐きだすと勉さんは自分で入れたコーヒーを口に運んだ。
「それに君の元がわかったとしてどうするこことも出来ないんだよ」
それはそうなのだろう。知った聞いたとして、言葉としては理解できてもその記憶が蘇るわけではないのだろう。そもそもそんなことはこの世界がなかったことにしてしまっているのだ。それこそ物語を読んでいるに等しい。
「それでも、知っておきたいんです。この世界で生きるていくために」
「わかったよ。できるだけ協力はしよう。ああ。そうだであればここで手伝いをしないか?どうせ学校にも行く気はないのだろう?」
勉さんはそう手を差し伸べてきた。
「世界一の書店。黄昏書店へようこそ。
どうやら勉さんの中でなにかが決定しているらしかった。
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