肉しか信じない・大好きだった近所のお姉さんの・オンリー1
大好きだった近所のお姉さんの引っ越しが決まった時はもうこれ以上の不幸は人生この先ありえないだろうと思っていたのに、そこから続く人生でそんなことはなかったと知った。それでも、今回以上の不幸は訪れないのだと今は確信している。
瓦礫をキレイに吹き飛ばして空に消えていった光はどこまで飛んで行ったのだろうと不安もなる。それなのに黒いスーツの男性はそこに存在するままでその不可思議な現象に何が起きているのか理解が追い付かない。
「お疲れ様です。とりあえず無事に終わったみたいなんで、また明日来てください。彼はこちらで家まで送り届けていきます。彼はきっとこのことを覚えていないでしょうし、危害を加えることはないと思います」
「いや、なにがどうなったんですか。よくわからないんですが」
本屋さんは男性をあっさりと担ぎ上げると階段を何事もなかったように上がっていく。
「それも踏まえてまた明日です。オンリー1の君には話しておかないこともありますが、急いでも仕方がない。今日はおかえりなさい。その腕もイメージすればもとに戻るはずです」
言われてからハッとするけれど、腕が機械仕掛けのままだ。元の自分の腕をイメージする。
ズキッ。
頭が痛む。力の副作用なのだろうか。そんなことを言ってはいなかったのだけれど、見てみると腕がもとに戻っている。その手を
「ありがとうね」
一所懸命見あがてくるその笑顔がかわいらしくて、今はこれでよかったんだと、自分を納得させて家路についた。
あんなことが近くであったはずなのに町の様子はいつもと変わらないように見える。警察も、消防も出動していないみたいだし、本屋さんの隣の家もなんともなかった。もともと理解できていない力が原因だ。理解できないことが起きているのかもしれない。
「おっ。あんちゃんじゃないか。寄ってきな」
顔なじみのおっちゃんが、ガラスケースに入った自慢の肉を指さしながら客寄せをしている。ここで肉を買って家で調理するのが幸せを維持するひとつだったりする。肉しか信じない。そう力ずよく描かれた看板に釣られるように、明日の聞きたいことを考えすぎておっちゃんのセールストークを半ば上の空で聞き続けた。
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