第14話 闇堕ち
どれくらいの時間意識を失っていたのだろう。まぁ誰もいない場所なんだから少しくらいのんびりしていても…と思うのだが、なぜが気配を感じて仕方がない。
ゆっくりと人の姿で立ち上がると、死の闘技場の色が黒から白に変わっていた。きっと「地獄の床」で今までの死者達の魂や血も私は吸い取ったんだろう。
まさか「地獄の床」が私に覆い被さるとは…
ステータスを見ると「勇者」と書いてある…が時折ボヤけたりするのはなんだろう…
まぁいいや。どうやって戻ろう。何となく空を見上げると偽物の星空が広がっていた。
(誰かと…見る景色は…綺麗なのか?)
そんな風に思っていながら見上げていると、空の壁がひびが入り、そして勢い良く音を立てて割れた。そして入ってきたのは天使の様な白を基調とした、羽の生えた奴らだった。
私はまた面倒なことになったと思った。
総勢100人?くらいだろうか。こんな狭い場所にそんな数押し詰めるなよバカ。なんて思った。
『また面倒なヤツらが来たもんだね。私に何?』
【一国の勇者とギルドマスターの消息が一気に消えた。しかもここ、死の闘技場にて。】
『今までとてそんな事あったろ?人間の統率力なんかですぐに元に戻るさ』
【ギルドマスターだけの消息なら。そこに一部地域の勇者が総員亡くなったと報告が入った。】
『…へぇ死神も背後にいるのか…天使が死を司る…なんておかしな話だもんなw』
【…隠してても仕方ない。その通り。死神から対価を引き換えに貰った情報。】
『対価ねぇ…wで?私の事はどうするの?』
【この軍勢を見てもらえればわかると思うがここで処分する。】
『処分…ねぇ…今日はあちらこちらから私の命が狙われるものだ。』
【戦天使100騎の勢力味わうといい。】
そう言うとリーダー格の後ろに居た天使達は一斉に攻撃態勢に入り、流れ込むように襲ってきた。
まずは4体の天使が私の四方を囲んだ。そして同時に私に向けて串刺しにする為に、突っ込んできた。それは先程の勇者戦なんかより一糸乱れぬ動きだった。私は2対の脚を出し全ての剣を弾き、足から冷気を出し、天使達を床に固定した。
天使達も羽ばたくが虚しく抜け出せないでいた。
そして1人の天使を脚で串刺しにしようとした時上から大きな盾を持った天使が舞い降り防いだ。
『へぇ…いのちだいじに…ねぇw』
そして時差と共に他の3人の天使の前にも盾を持った天使が舞い降りた。
『そんなに集まっていいのかな?』
私は左から2番目の目に魔力を貯め、放った。
すると天使達は、生物らしからぬ動きをし、8人から4人、4人から2人とくっつき、巨大な真っ黒い牛頭馬頭(ごずめず)が生まれた。牛頭馬頭らは雄叫びをあげると天使達に向かって、巨大な斧や槍を投げ始めた。1本投げて終わり…なんてことは無く、宙から斧や槍を作り出していた。その速度は異常で目視するのは困難だった。
私には見えるけど。
牛頭馬頭らの攻撃でいくつかの天使の胸を貫き、そのまま落ちてきた。私はそれを易々と見逃さず、プチ地獄の床で天使を絡め取り…これが本当の堕天…
なんて思いながら落ちてきた天使を堕天使にしていった。
天使達も黙って見ている訳では無い。弓矢を使い応戦してきた。私は2対の脚で氷の弓を真似て、打ち返していた。矢と矢がぶつかり合うと氷の矢の方がそのまま突き進み天使達を荒らした。
堕天使達は天使達に襲いかかり空は血飛沫が飛び散る有様だった。
はぁ…自滅して逝けそう願っていた。そして振り返り狭角で鎌を防いだ。
『死神も天使と手を組むとは世の中終わってる』
【我らの調和を乱すやつはどんな手を使っても殺す】
『物騒だね、お一人様?』
【貴様なんぞ我1人で十分】
『後悔させてあげる』
そう言いお互い間合いを取り、私は小細工を少ししてから狭角で首筋目掛けて襲いかかった。
死神は私のまだ人間の足を狙い刈り取るつもりだったらしいが振りかぶったまま動けない。
【き、貴様!】
『油断大敵ってな』
パリパリピキピキ
私は蜘蛛の姿になった。真っ黒い蜘蛛に。
そして死神を抱きしめるようにくっつき、狭角で喰らいついた。
【覚えて…ろ】
そう言い死神は消えた。と同時にゴゴンっと2つ膝を着く大きな音がした。牛頭馬頭らが限界になったらしい。それでも半分程に天使達を減らしたのは優秀だろう。
【死神を持ってしても…我が勢力を持ってしても倒せない…なんてありえない…】
『悪イナ、私モマダ死ぬ気はナインデネ』
【こ、こうなったら…】
そう言い、リーダー格の天使は懐から水晶を取り出した。それは透明でとても綺麗だった。
そしてそれを私にすごい力で投てきしてきた。
私は目視出来ていた為、後ろに下がり、念の為と糸を着地点に吐き、クッション代わりにし、割れないようにした。
そしてよく見るとその水晶は封と書いてあった。
あぶね〜回収しとこ
そして糸を巻、回収した。
【あぁ…あぁ…ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙】
理性を失ったリーダー格の天使は私に光の剣を振りかざすがどれも弾き返されている。私は針で刺し毒を注入した。
【ウヴァ…】
『所詮ソンナモンカ…ツマラナイ』
リーダー格の天使を踏み付けると他の天使達はたじろぎ、攻撃が止まった。
『言い残スコトは?』
【お前は…いずれ地獄を見る…苦しみ死ね】
『天使ラシカラヌ言葉ヲアリがとう』
そう言い一気に狭角で切り裂いた。リーダー格の天使は消えていった。
『まだやるか?』
そう言い残った天使を睨むと一目散に逃げていった。
…
黒い蜘蛛になってる…いや黒よりどす黒い色。
ステータスを確認すると「勇魔」となっていた。
はぁ…何だよ…勇魔って…魔はどこから来た?
そう言いここならしばらく誰も来ないと思い、蜘蛛の巣を作り、堕天使達には空に空いた穴から誰も来ないように見張りをさせ、牛頭馬頭には死の闘技場の番人をしてもらい、私は深い眠りについた。
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