第12話 ペナルティーの密会
私が寝ている(耳は起きてる)間に随分私の悪口を目の前で言ってくれるよ。狸寝入りしてたら丸聞こえだぞ?狸寝入りだけど。そういえばマスターが言ってたガッシュってどんな奴なんだろう…私より強いのかな…そんな考えが頭を過ったが、今居ない存在を考えた所でどうにもならんし。
ギルド内はマスターの元に集まっていた。私の処罰をどうするかと…私は追放でもしてくれれば楽なんだが…勇者と言う称号を持ってる以上、野放しにできないのだろう。
「ルカはダメ元でガッシュに連絡を送ってくれ」
「わかったわ」
「私はこれからマスター達を招集しこの事態をどうにかしてくる。」
「それはうちが手薄なのバレてしまうではありませんか!」
「これ以上悪い結果に持っていくつもりか?」
「…申し訳ございません」
「では行ってくる。」
そう言いマスターは魔法陣の中に入り消えて行った。
ルカはガッシュに強い念話を送っている為、目を瞑り、呼びかけているようだった。
「アイアースのギルドマスター、この忙しい時期に全てのマスターを招集する意味がわかるかね?」
「存分に存じ上げております…」
「アイアースも落ちたなw」
「…申し訳ございません」
「それで、招集理由は何かね?」
「アイアース所属勇者が別の者になりました。」
その言葉で数名が息を呑んだ。
「勇者の称号を…奪われた…と言うの?」
「はい」
「各ギルド勇者最低1人と言うルール、忘れて居らぬな?」
「存じ上げております」
「その勇者の称号を奪った人間は…」
「人間では御座いませぬ…」
「…は?」
沈黙の後に数名の疑問が重なった。マスター長も驚きを隠せていない様子だった。そして、
「魔物か?」
「その通りでございます。」
その言葉で、その魔物の討伐を考えた。勇者が居ないなら2人以上いる所から派遣すれば良いだけの話。ただし、魔物が勇者を名乗るのは最早魔王。
芽は若いうちに小さいうちに取り除くべき、そう思考の一致に至った。
「強さは?どれくらいだと言っていた?」
「ワシが聞いた話ですが、リザードマン10前後、ディラハン2体だったはずです。」
「ディラハン!?誰がそんなに死霊を何処で!」
「場所はアンテ村、そこに村人達、オーガ、ゴブリンの群れ、リザードマンの群れ…それらの無数の死体から形成されたと考えております。」
誰も言葉を発することが出来なかった。ディラハンは、それほど人間には容易に勝てる相手ではない。いくら勇者と言えど、1体がギリギリ…
マスター長が口を開いた。
「その勇者の称号を奪った魔物はなんと言う魔物だ?」
「それは…」
答えようとした時中央の魔法陣が光1人のローブの女性が現れた。
『へぇ…ここがマスター会議の場所なんだね』
「…ぁ」「ぇ…」「ありえない…」
色んな声が所々から発せられた。
アイアースマスターは
「ど、どうやって来た。あの魔法陣はマスターしか入れないはず…」
『ん?あぁ痛かったさ、無理やり来たんだから。こじ開けて来たって感じかな。』
芽は若いうちに小さいうちになんて思っていたマスター達は皆考えを改める事しか出来なかった。
もうこれは勇者では無い…魔王だと。
マスター長と私は何故か見つめ合っていた。
「君はどんな魔物かね?」
『私は白い大蜘蛛さ。今はね』
「黒くなると?」
『さぁね。貴方達は私を魔王と認識するのでしょう。だったらそれなりの行動をさせてもらうまでですよ』
「君の敵は誰だい?」
『私の敵は…私を邪魔するものかな。そこに人間も魔物も無いよ』
「自由に生きていたいと?」
『まぁそれが適切な言葉かもしれないね』
「では何故勇者の称号を…」
『それは自分より弱い物が持っていた所で意味無いだろ?』
その言葉にマスター達は息を呑んだ。自分達の勇者が危ないと。
『それで?私の処罰は?ギヒヒ…封印でもするかい?』
マスター長は少し口を閉じ、そしてしばらくすると口を開けた。
「アイアース以外の勇者との戦闘。もちろん貴女は1人で全ての勇者を一気に相手をする。それで貴女が勝てば自由の身にしてあげよう」
『良いのか?』
「ただし負けたら爆澪の牢獄に生涯を終えるまで捉えさせてもらう。」
『…ふーん』
「不満かね?」
『不満?強いヤツと戦えて負けたら一生牢獄…これ程楽しい事は無いだろ!ギシギシ』
「よっぽど自信がある様だね。私の所の勇者を侮ることなかれ」
『それで日付は何時行うんだい?』
「明後日の16時より行う。場所は死の闘技場。アイアースのマスターに案内されて来なさい」
『わかった。楽しみにしてるよ』
そう言い残し、私は魔法陣を使いまた姿を消した。
「死の闘技場なんて何百年と使ってませんよ!」
「それだけ…あの者はヤバいと言う事だ。皆覚悟し明後日を迎えよ。」
そう言うとマスター長は退出した。
「アイアースお前覚えておけよ」
「私の勇者に何かあったら縁を切らせてもらいますわ」
「解散の準備でもしておけw」
各々口に出していきながら退出して行った。
1人になった時、わしは…何も出来ないと弱さを知りゆっくりと退出して行った。
「マスター!」
「戻った」
マスターの表情は行く時の数倍以上黒く青ざめ死に行く人の様な顔をしていた。
そして今話してきた事をギルドメンバーに伝えた。
もう皆、身を委ねることしか出来なかった。
あんなのが魔王になったら世界が滅ぶと。
「マスター!ガッシュと連絡が取れたわ。」
目を見開き、マスターは、
「ガッシュ!」
「ジィさんそんな声出さなくても聞こえてるよ。現状は何となくルカから聴いた。大蜘蛛を止めれば良いんだな?」
「そ、そうだ。頼めるか…」
「あぁ…明後日の明朝前にはギルドに帰る」
「申し訳ない…自由にさせると言ったのに…」
「ギルドだけの話じゃねぇんだろ?なら安心して俺を頼って来いよ。じゃまたな」
そう言い念話は切れた。ガッシュが戻ってくるのは心強い。明後日の明朝、ガッシュと勇者という名の魔物を連れて行く。あぁ…老体にはきつい仕事だ。
そうして日付も経ち明後日の明朝、3人揃っていた。
『あんたがガッシュか…ヒヒ楽しみにしてるよ』
「あぁ俺もだよ」
そうして3人は死の闘技場に向かって行った。
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