第11話 ペナルティー

私はガウラを肩に乗せ来た道を戻っていた。どうせ私が着く頃には私の行為が知れ渡り、何か罰を与えられるんだろうなぁ…そう思いながら帰路についていた。

街に入ると元勇者がフードの謎の人間の肩に乗せられていると噂が街中に広がった。中には怖いもの知らずなのか、

「勇者様は生きてますか!?」

なんて聞いてくる奴も何人かいた。その度に頷いてやったら安心して去っていった。そしてギルドの入口にとうとう着いてしまった。私は深い深い溜息をひとつしてからギルドに入った。

入り口に居た時はギルド内の賑やかさが聞こえてきていたが、私が入った瞬間、全員振り向き睨み付け、ギルドは静けさに包まれた。なんなら殺気を殺しきれてない奴までいる始末。はぁ…

一応マスターの所まで行く。その最中も不穏な空気は消えること無く、あーココロがイタイナァ〜。

マスターの前に行くとマスターまで私の事睨んでいた。なんでかなぁ…

「何故皆が怒ってるかわかるか?」

『わかってたら苦労してない。』

そう言うとギルドメンバー達は

「勇者をそんな目に遭わせて何がわからないだ!」

「アンテ村も大きな損害を受けたらしいぜ」

「アンデッドも呼び寄せたとか作物とか育つか心配だね…」

そんなこんな色んな罵声が飛び交った。

マスターが手を上げると皆静まったが怒りは収まりきれてないようだ。呼吸が荒いやつがちらほら。

「ギルドにはギルドのルールがある。それを君は違反し過ぎた。」

『なら追放でもするか?あ、重いからコイツは返すわ』

そういい元勇者ガウラをカウンターの上に(少し)雑に置いた。その行為すら仲間を侮辱…と言う変なスイッチを入れたらしい…はぁ仲間思いすぎるだろ…

「勇者がここまで傷だらけなのに、君はなぜ傷一つなく立っていられる?」

マスターのつまらない質問にどう返そうか考えていたら、虫の息の元勇者が

「彼女はアンテ村を守るのに…私とは単独行動をして貰った…だから責めないで欲しい…」

「我々の勇者がここまで傷付いて許せる者がいると思うのか、勇者よ。」

「…私は…。」

そう言い元勇者のステータスを提示した。その行為に、その中身にギルドメンバー全員が息をのみ、驚愕し、絶望した。

名前の所が勇者からガウラのみになっていた。

名前を与えられていた事に驚きも隠せなかったがそれ以上に勇者と言う称号を無くしている事に絶望するしかなかった。流石のマスターも目を丸く開いていた。

「ゆ、勇者の称号はどこに行ったのだ?」

マスターが口を開くと待ってましたとばかりに私はステータスを提示…と言っても名前は隠し、勇者と言う部分のみだけど。

全員が再三絶望した。もう嗚咽や悲鳴、怒号…色んな声がギルド内に響き渡った。マスターもどうしていいのかわからなかった。その時ルカが

「どうして勇者の称号を奪ったの?」

皆が気になっていた事を聞けるのがルカのいい所だ。

『どうして…?自分より弱い奴が持っているなんてつまらないだろ?それに沢山居るんだろ?勇者って奴は。なら1人別人になった所で問題無いだろ?』

「そうね、まぁ理にはかなってるわね。でも名前を与えたのも貴女でしょ。」

『そうだ。名前を与えた勇者がどれだけ強いかと思えばゴブリン数十人に虫の息だ。武装していたからなんて理由で反論してくるなら、私の戦っていた相手をお伝えするが?』

「お、お前の相手は誰だったんだ…答えろよ…」

『聞くかw私はリザードマン10前後、隠密魔法使い数名、ディラハン2体…あぁ後アンテ村の村人達と生き残った魔物達の論戦とかか?』

それを聞いて口を開けるものは居なかった。ディラハンはその辺のアンデッドの中でもかなり強者。それを2体相手するなど…

ルカは困ったような顔をしていたが、ガウラを医務室に移動させた。

そしてマスターは…

「お前をアンテ村の件を任せたのは間違いだった」

『…で?』

「お前が勇者であると皆が認めるまで、ここのギルドには居てもらう。」

『それは随分面倒な事を…』

「それがアイアースギルドマスターからのペナルティーだ」

『それはここへの拘束…と言う認識でよろしいかな?』

「そう捉えても構わない」

面白い…面白いぞ…ククク

私の顔はフードで隠していたはずだが、皆私の狂気的な笑顔に恐怖を覚えたらしい。そしてルカがドアを勢い良く開け、

「勇者さん?貴女はどんな魔物なの?」

その言葉で全員が攻撃態勢に入った。

『ギヒヒ…私ワネ』

ビギビギギシギシミシミシ…

『白キ大蜘蛛』

その姿に皆(あぁ…終わったな)そう感じ、どうしようもないと。

『ルカ、君は何時から?気が付いていた?』

「初めからよ。人間で目が4個なんて普通魔物でしょ」

『それを受け入れる君も中々イカれてるね』

「ありがとう」

『もういいかな?』

そういうと人間の姿に戻りローブを深く被り直した。

『それで?ペナルティーはここにいる奴と和解すれば良いんだな?』

「…も、もう少しペナルティーを考えさせてくれ」

『あぁ良いだろう。決まったら呼んでくれ。』

そういいカウンターの一番端の席のさらに奥、荷物置き場に小さく丸くなって眠りについた様だった。

それを見たギルド内は皆ヘタり込んでしまった。

マスターもこんな事どうしていいのかわからない状態らしい。

「あいつが居れば…ガッシュが居れば…この状態は収まったのかもしれない…」

その独り言は私の耳に入っていたが今は寝る事に専念した。

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