第8話 旅路

街中はローブを被り4個の目を隠し、勇者と共に歩いていた。勇者は街中でも有名なのか色々な人から声を掛けられていた。私の事に触れる人は殆どいない。新しい仲間なんだろう。そんな認識だろう。

街中を抜け1つ思ったことがある。

『何故ガウラは勇者なのにギルドなんかに所属しているんだ?要らねぇだろ?』

「そうだね、でもね、勇者ってこの世界結構いるんだよ。」

『…どういうことだ?』

「勇者って言わばヒーロー、親が勇者だったのさ。私はその子供だから勇者の末裔の称号俗に、勇者と呼ばれる。親はもう亡くなったからね。」

『それで?親と子は違うだろ』

「…その通りさ、私は5番目、だから戦地に向かう必要は無い。よっぽどが無い限りね。でも持って生まれたもの。それをないがしろにするのも出来ないからね。私は村や街を守る勇者になった…って所かな?」

『…という事は勇者は多くもないが少なくもない、と言うことだな?』

「そういう事。だから街の人達は私を勇者様なんて呼ぶけど、私は全然家族の中では弱いんだよw」

『ふーん…そ』

「話変えるけど、今から行く村は少し湿地帯も含まれてるからリザードマンや足腰の強いゴブリン達が居るから気をつけて。」

『人間の姿で戦えるかわからねぇぞ?』

「アラクラなら大丈夫だよ、剣の振り方とかは今度一緒に師匠の所に行こう」

『…面倒だな』

そう言いながら野原を歩いていると、正面に馬車のタイヤが深い水溜まりにハマって動けなくなっている集団が目に入った。

ガウラは駆け寄り

「大丈夫ですか?」

「台車がハマってしまってね…手を貸して貰えぬだろか…」

「大丈夫ですよ、貴女もですよ。」

私はローブの下で顔を顰めたが見えるはずもなく、ハマっているタイヤに近づき、軽く持ち上げると水溜まりからタイヤは抜けた。

「いやいや…貴女様は力がおアリなのですね。ありがとうございます。」

『…感謝…久しぶりだな』

「良かったらアンテ村まで行くのですが一緒にどうですか?」

それは今からちょうど向かう所だった。だが、私は

『お断りします。気持ちだけ貰いますよ』

「そうですか、ではアンテ村で会った時にはよろしくお願いしますよ」

『…あぁ。』

そして馬車に乗った人達は私達より先に道を進んだ。

「アラクラ、なんで断った?」

『アイツら…何か隠してる。何かの声がした。』

「声…急いだ方が良さそうだ。」

『…乗れ』

「え?」

バリバリガサガサ

ガウラが振り返った時にはそこにはローブの女性ではなく、白い大蜘蛛が居た。

『裏道…ススムカラ…ハヤ…ク』

「わかった。背中失礼するよ。」

勇者はサッと身を乗せて私に掴まった。

私は急いで森の中を走りアンテ村に向かった。

アンテ村に近づく程足場は悪くなるが、移動速度が変わらないのは流石アラクラの身体能力なのか蜘蛛の元々の能力なのか。

アンテ村に着いた時入口は全て塞がっていた。明らかに防衛体制である事がわかった。だが、周りにはゴブリン達の姿は見えない。

『…怯エテル声…シカシナイ』

「中に入れるかい?」

『私ガ入ッタラ人間、警戒…スルゾ』

「そこは私が何とかする。」

「ナラ、行クゾ」

そう言い八本の脚に力を込めそれなりの高さの堤防を1つのジャンプで飛び越えた。

そこには何人かの死体と、それを貪るゴブリンとリザードマンの姿があった。

ゴブリン達は私達の姿を見つけると、死体食いをやめて、襲いかかって来た。私は触肢や脚、お尻の刺を使い全員沈めた。1人だけ糸でぐるぐる巻きにしたリザードマンに尋問を勇者がした。

「何故この村を襲ってる?」

【…答える義務は無い】

そう答えたリザードマンの横で私は牙を鳴らした。

【な、なんで勇者がこんな大蜘蛛と一緒何だ!話が違う!】

「話とは?」

【…お、俺たちは雇われだ…アンテ村の村人を好きにしていいとそして、そこに住めばいいと…俺達も住処追い詰められてるんだよ!】

チョロいな。そう私は思ったが、勇者は親身に考えているみたいだ。だから私は

『ソウカ、居場所無イナラ…死ノミ』

そうして牙でリザードマンの鱗を突き破り血肉を啜った。残ったのは鱗が剥がれたリザードマンだった皮だった。

「待て!なんで殺した!」

「何故?意味…必要…カ?」

そういう私の体の1部は鱗が生えてきた。触肢の硬さも増したように見えた。

「何でもかんでも殺すな!生き物は皆平等だ!」

『平等…ネェ…ギィィィヒ』

「いいか?次やったら罰を与える。」

『バツ!ギィィィヒヒヒ、ナンダロウナ♪』

不穏な雰囲気の中大蜘蛛と勇者は歩いていた。

『アソコニ生キ残リ…』

「わかった。貴女はそこで待っていてください」

そう言い、勇者はノックをし、家の中に入っていった。

ざっと中身は、ゴブリンとリザードマンがアンテ村を襲いに来た。それに何とか立ち向かったが、叶う訳もなく何人もの人が犠牲になったと。

だが、急に群れが収まり敵の姿が見えなくなったと。

それで動けずに1箇所に集まり身を寄せていたという訳らしい。

「そうでしたか…すみません…私が遅くなったせいで…」

「勇者様は悪くありません!どうかお顔をおあげください!」

なんの茶番だよ…と私は思ったがまぁ生存者がいるならまだマシだろ。なんて考える元会社員なんて私はもう人間辞めてるなぁwなんて思っていたら聞き覚えのある馬車の音が遠くで聴こえた。

【さてここですね、だいぶ住民も減ったみたいですし、オーガでも放ちますかw】

【リザードマン達の長達もそろそろ来る時間ですしねw】

【色んな生物の死体を合わせて作る死霊は何になるのか楽しみですね!】

等と聞こえて来た。私は触肢でノックし

『危険…死ガ迫ル』

そう伝えると、皆出てきた。そして悲鳴をあげた。

こんな白い大蜘蛛がそばに居たなんて誰が想像出来たか。勇者が精神安定の魔法を使い、少し落ち着いたが私に対する視線は相変わらず痛い。痛くないが。

「どういう意味だい?大蜘蛛」

私は聞こえた事を伝えた。すると生き残りの村人達は全員顔を真っ青にした。

「どうするか…ここは中心部過ぎる…」

『私ガリザードマン達ヲ説得シテクル』

「出来なかったら…?」

「仲良死ダ…ヒヒヒ」

「その間この者たちはどうするのだ」

『勇者ガ守レばイイ』

「…わかった」

『ジャァ私ハ行クゾ?』

「気をつけてな?」

その言葉を最後まで聞かずに私は走り出した。

「ほ、本当にあの大蜘蛛は味方なのでしょうか…」

「私は信じてる、大丈夫です。私達は…時間の限り村の端に行きましょう!」

そう言い、生き残った村人と勇者は走り始めた。






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