第4話 こんにちは人外生
私は多少怒りを覚えていたが、理性を飛ばすほどでは無い。ある程度プランは出来ていた。
上手くいかなかったら最悪壁をぶち破る。まぁそれじゃ面白くない。
血塗れの体で壁が登れるか不安だったから少し試して見たが問題は無さそうだ。蜘蛛って凄いなと思った。
では、始めようか。
ボスの男は部活の男が無惨に殺された事態に満足してニヤニヤしているのが見て取れる。
まず、腹から多量の糸を貯め、一気にガラス張り目掛けてぶっぱなした。
[っ!?]
その隙に壁にくっつき口と脚から電力を吸収していた。そして天井目掛けて丈夫な糸を発射し、自分の体を揺すり勢いが着いた所で、ガラス張り目掛けて牙を突き刺した。
パリィン!ットサ
[お、お前!]
『ギィィィ…コ…ロ…ス』
[お前をその姿にしてやった私に刃向かうのか?]
『望ンダ…カ?』
[…クソ。お前ら殺れ!]
ボスの一言に四方から武装した部下達が数名現れた。そして銃を発砲してきた。
避けようと思えばいくらでも良けれるだろうと思ったが、避ける気すら起きなかった。理由は1つ。そんなもので私に傷を与えられるはずも無いと本能がわかっていたから。
[ば、化け物め…]
『ギィィィwオカエシだ』
そう言いさっき壁から吸収しておいた電気を体から放電した。
吸収した量は微量だが、体の中で膨大になった電力は、武装した部下達を黒焦げにする程の威力だった。流石に自分でも驚いた。
ボスも勿論例外ではなく、放電の餌食になっていた。ガラス張りの部屋の中は焦げ臭い匂いが充満していた。
[は、はは…世界は終わったな…]
そう言い、ボスは死んでいった。
私はつまらないなぁと感じた。人の命をこんなに奪っておいてつまらないと感じるのもどうかと思うがもう人間じゃない。そんなもんだろと思っていた。
さて、この蜘蛛の姿でずっといるのは不便だ。人間の姿になれるか試してみた。
『…ギィィィ…ッゥゥウ…はぁ出来るじゃん私』
殆ど人間の姿になった…ただし目が…いや8個ではない。4個になった。いや…人間は2個。さてどうしたものか。
まぁ端の目はメイクですとでも言って目を閉じておけば…試しだな。
腹減った。出るか。そういい施設を私は後にした。
いや後にしようとした。何か生体反応を感じた。地下の方からだ。
『ふーん…人間じゃなかったら食べてみよ』
そう言い、コツコツと足音をたて、地下の方へ向かっていった。人間の体とはいえ、中身は蜘蛛。暗闇など問題なんかない。そして地下に降りていったその先に1つ部屋があった。その中に入ると、小さな瓶の中に小さなトカゲが入れられていた。
そのトカゲは私の姿を見ると…全身の鱗を逆立たせていた。
その他にも色んな生物の亡骸が乱雑にされていた。
『なんだ、トカゲだけか…腹の足しになるか不明だし放置だな。じゃあなトカゲくん』
【ぼ、僕もつ、連れてって…】
『連れてく?私のメリットは?』
【僕も人間…の子供だったの…もう…こんな場所嫌だ…】
『ここのボスは殺した。出してやるから自由にしろ』
【ッ!ぼ、僕はあなたについて行きたい】
『はぁ…私に着いてきてどうなっても知らんよ?』
そういい瓶の蓋を開けた。
私はここのボス?だった奴は人体実験大好きマンのサイコパス野郎だったんだと思った。気持ち悪い。
トカゲは瓶から出てくると私の肩に登った。
『怖くないのか?私が』
そう言い、4個の目で見つめてみた。少しビビっていた。だが、身震いを1度すると決意を固めた様に
【僕だって…魔眼だから…】
『ふーん、そ。他に生存してる奴は?』
【ここにはいないと思う。】
『なら行くよ』
【…うん】
そうして1匹のトカゲと1人の蜘蛛人間が研究所から出ていった。
出た先は街の中とはかけ離れた木々も薄暗く、当たり前だが、人目に届かない場所に出た。
『腹減った』
【その木の実は食べれるよ】
そう言いトカゲは指を指した先に少し大きめの木の実があった。私は飛び跳ね、2つ木の実をもぎ取った。
…人間じゃ割れない…蜘蛛になるか。
『降りろ』
【え?う、うん】
そういい人化を解いた。
【君…本当に使いこなしてるね…それに…結構体大きいんだね…人間より大きそうだね】
『コッチ…言葉…ハナシニクイ』
【いや一日目でそれだけ話せるのすごいと思うけど…】
そして右脚で木の実2つ割った。
ココナッツの様な汁が沢山入っていた。
『ノメ』
【僕も?いいの?】
私は飲み始めた。
…味がしない。周りの果肉も少し食べてみたが、同じく味がしない。チラリとトカゲを見ると美味しそうに小さな舌で飲んでいた。
ギシリギリシと足を動かし大木に噛み付いてみた。
やはり何も味がしない。
【どうしたの?】
『…味ガ…無イ』
【…蜘蛛だからなのか変化の後遺症なのか僕にはわからないや。人間で飲んでみたら?】
そう言われて人間の姿になってみてから少し残っていたココナッツを飲んでみたが…やはり味は無い。
首を振ってトカゲに伝えた。
【そっか…治るといいけど…】
別に食事に頓着ないからどうでもいいと思ったが、一応首を縦に降っておいた。
【空腹は満たされた?】
『…少し』
なんて言ったが逆だ。むしろ今すぐなんでも貪り食いたい。
『行くよ』
【う、うん】
そうして2人は樹海の中を歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます