第3話 さよなら人間
ボスはこの実験にそれなりに満足していた。ここまで適正している人間がその辺に生活していたんだ。適当に理由をつけて行方不明にしとけばいいのだから。
今回の実験は人間を人外にする実験。決して表に出せるものではない。だが、ボスはこの実験の成功はもうすぐだと思っている。その理由は…
私は目を覚ました…いやもう視界が変だ。片目を閉じようにも閉じることも出来ない。それに視野が広い気がする。
体も同様に昨日までの4箇所は縛られている為、動かしにくい…いや1部だけだ。表現するなら肘を固定されてるがその先は自由。いや実際自分の目で見てそれを認識している。細くうっすら毛の生えた足が4対。縛られてるのは2対。残り2対は自由に動かせる。顔の横に脚よりは小さい1対の触肢のような爪とも短く硬くなった腕の様なものもあった。
腹部と首を縛っていたものはもはや、私の体の変化に壊れていた。腹部は柔らかそうに見えたが、自由な脚でつついてみたら意外と硬さがあった。
下腹部は卵形の先に針がついている。
私は察した。あぁ…人間辞めたんだと。
『…ギィィィ』
声も出してみたがそりゃ出せるわけが無い、声帯が人間じゃない。後で練習しようと何故か思ったが。
はぁ…私これから何されるんだろう。殺される?遊ばれて殺されるのは癪に障るな。とりあえずこんな鎖外せそうだし、起きるか。
そう思い私は少し力を脚に入れ起き上がった。
カリカリカリカリ
うん、足音が完全に人間じゃない。この体…蜘蛛か
[おはよう、素晴らしい体はどうだい?]
ガラス張りの部屋にいるボスの声がスピーカーから響いた。
『…』
睨む…と言っても瞼も何も無い。あ、登ってみるか
そう思い、壁を登り始めた。滑るかと思ったが、意外とカリカリと登ることができた。そしてあっという間にガラス張りの前にたどり着いた。
[もう体を使いこなしているのかい?素晴らしいね]
『…ギィィィ…コ…ロス』
[念話もなく声帯で話もできるとは…君は本当に適正なんだね。おめでとう。]
私は大きく1番上の脚を振りかざした。いや振りかざそうとした。その時、壁から電気が流れた。痛み…というより驚きで私は壁から落ちてしまった。
落下の衝撃は人間の時より中身が減ったせいか、そこまで痛くなかった為、すぐにピョンっと起き上がった。
[落下してもその元気か、素晴らしい、本当に素晴らしい]
煩わしい声だな…そう思いながら部屋を徘徊していた。もう認めざる負えないが蜘蛛だ。蜘蛛の目に暗闇も何も無い。本当に何も無いんだな…この部屋。
さっきガラスの反射で目の数は8個だった。今のところボヤけることは無く、普通に見えている。
[空腹ではないか?私からの食事のプレゼントだ。]
そう言うと、壁の一部が開き、見覚えのあるものが投げ捨てられた。それは、私を初めに後を継いできて誘拐した2人組の1人だった。
私が人間を食べる?巫山戯てるのか?私は無視をした。投げ捨てられた人間は何かを喚き叫んでいたがそれも無視した。
もう寝ようと部屋の隅に移動し私は睡眠に入った。
いや、入ろうとした。そしたら人間が
「おい!起きろ!俺を助けろ!こっから出してくれたらお前も出してやる!!お前が居れば俺は生きていられるんだ!」
『…』
「た、確かに俺はお前を騙した!それは本当に申し訳ない!頼む!」
『ギィィィ!』
煩い煩い煩い煩わしい!
気がついたら私は1番上の脚2本で男を突き刺した。
1度ではなく何度も、自分に血飛沫が、床が血の海になろうがお構い無しに。
[はははっせっかくの食事をズタボロにするとはね]
人間を殺したのに何も感じない…あぁ人間の心も無いか。ならもういいや。コイツら…殺そ。
そう思い、戦闘態勢に私は入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます