第2話 賭け

 一体今の人は何だったんだ? —気味が悪い。なぜ私が自殺しようとしていることが分かったのだ?それに初めてあった人に人間が飲んだことのない薬を渡すなど神経がどうかしている。どうせ闇の深い企業に勤めているのだろう。——でも私が自殺しようとしていたのをわかった上でこの消したいものを消せる薬を渡すのは,どうせ死ぬなら実験体としてもいいでしょ?と見下されているようなものだ。人の手に収まるようなことはもうしたくない。絶対にこんな薬なんか飲むもんか!


 だけど私だって本当は自殺なんかしたくない。ただただ楽しい生活を送りたかっただけだ。自分の夢を追いかけたり,友達とたくさん遊んだり,好きな洋服着て色んな場所に出かけたりしたかった。オシャレが好きで美容師になりたかったけど,ファッション誌見ることすら両親にはいい顔をされなかった。最近は隠れて読んでいたけど、そんなにだめなこと?好きなことくらい堂々とやらせて欲しいよ。でもそれが無理だから私は私の人生をあきらめる。

 そろそろ私も降りようか。いつの間にか車両の中には私一人しかいなくなっていた。次の駅周辺を散策して誰にも見つからない場所を探そう。そこで夜に決行だ。


 そういえばさっきの人『ものだけじゃなくて人も消すことができる』って言ってたっけ。―――――試す価値はあるかもしれないな。両親のいない世界。もしちゃんと効果が出なかったりしたらあの男、深山玲人の思うつぼだが、、そんなのどうでもよくなってきた。もし念じるだけで嫌なものの存在を消せる能力さえ手に入れられれば,私の人生最高に楽しくなるじゃないか!私は賭けに出ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る